第15章

ある程度状況が落ち着き、男達も片付けたところで食堂に海賊全員が移動したのを見計らって「さて。」とその声が上がる。
「まだ全部の言葉は分からないだろうが…出来る範囲で聞いてゆくぞ。」
いいか?と子どもに声を掛けるとこくりと頷く。
「うし…まず、念の為俺の弁明からね。」
他3人の大人から微妙な表情を向けられているので、先に自分の方から説明しようと船長は両手を上げる。
「一番最初にコイツを拾ってきた時…暴れるだ正体不明だ人によって形を変えるだ言われたが…植物を出すなんて聞いてねぇ。」
それもそうだ、そもそもあの力があったら既に檻から逃げ出しているだろうと、聞き手に回っている彼等は納得する。
「取り扱いには気を付けろと言われたが…向こうもコイツに関して知らない事が多かったみたいだしな、だから今回の力について俺は最初から何も知らなかったぞ。」
弁明終わり!と言い、船長は次にサナを指差す。
「とりあえず、何であんな植物が出る事になったのか…出来る範囲でもう一度説明よろしく。」
話のバトンを渡され、何だかなぁと思いながらもサナはその口を開く。
「簡単に言えば…向こうがこの子に手を出さなければあの植物は出る事が無かった様に思います。」
まだその顔からどんな思いをしているか分からないが、少しでも不安を取り除く為背を屈め子どもの手を取り握る。
思っていた通りその手は冷たく、少しでも自分の熱が移る様にやわやわと包み込む。
「少しでも時間を稼ぐ為、降伏の意を伝えたのですが…それでも向こうの頭と思わしき人物は刃物でこの子の背中を切りつけました。」
その言葉にいち早く動いたのはメソドだった。
あまりの動きの速さにびくりと子どもは怯えた様子を見せたので、サナは「大丈夫…背中、見せてくれる?」と言葉を掛けながらジェスチャーで伝えると戸惑っていたが、その真剣な顔で伝わったのか静かに首を上下させる。
「すぐ終わらせる。」
するりとその着ている服の裾を掴み、ぺらりとめくると船医はぎょっとした顔を見せた。
「………本当に、切られたのか?」
確かにその背中側の服には切りつけられ裂かれた服とその近くに血痕が付着しているものの、その肝心な傷跡は嘘の様に無かった。
「カサブタや傷跡さえも無い…最初から無かったみたいな。」
その言葉でサナも背中に回って見るが、確かに全く傷跡が存在しない。
「そんな…確かにあの時。」
そこまで来て子どもがもぞもぞし始めたので、ノイが「くすぐってぇんじゃねーか?」と言い2人は離れる。
「それで、切られた後に…あの植物が出たんだよな?」
確認の為に船長が声を掛けるとサナが驚きを引きずりながらも「え、ええ…。」と答えた。
うーんとどうしたものかと船長は首を傾けた。
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