第15章

「―で、危ねぇ時に急に湧いてきたのがソイツか…。」
とりあえず話は聞いてみたものの、信じるにはあまりに荒唐無稽で聞き手に回っていた二人も渋い顔をする。
それもそのはずだと思いつつ、サナは言葉を続けた。
「危害を加えなければこの植物は襲ってこないんです…現にここに来る間、わたし達二人には何もせず、襲ってきた男達を捕らえて食べてを繰り返していて…。」
ちらりと後ろで離れている子どもと植物を見るが、ただ他に敵が現れていないか注意する様きょろきょろと辺りを見渡しているだけ。
「それで…どうするんだ、アレ。」
メソドが問うのはきっと植物についてだろう。
自分や子どもに危害を加えれば攻撃され、下手をすれば食べられる、しかし、急に湧いてきた未知の植物に世話を焼ける程この船の資源は満たされていない。
「ともかく、船長に子どもの事を今一度…ッ!?」
子どもの叫ぶ声が聞こえ、振り向くと戦闘不能になった人間達が積まれた山に植物が手を出そうとしていた。
じゅるじゅるとその花から人間を溶かす為に使うのだろう溶解液を垂れ流し、目の前に落ちている御馳走を見つけたとばかりに近付く。
「おい、ガキの言う事には聞くんじゃねーのか!?」
明らかに子どもが制止しようとしているのに、植物は知らないとばかりに一歩、また一歩と横たわっている人間達を捕食しようと動く。
「…聞いた事あるな。」
すらりとまた武器を持ち構えながらメソドが呟いた。
「肉を食う事を覚えた生物は、その美味さにやみつきになって味を覚えて食う様になる…人間の味を覚えた動物は、人を襲う様になるって。」
メソドが何を言いたいのかすぐに分かるが、それでもサナは武器を出すのを躊躇ってしまう。
「おい…戦わないと食われるのはこっちだぞ。」
もうすぐで食べられるその距離になり、子どもは助けてと言う様に声にならない声で叫んだ。

「誰だ、俺の仲間に手を出した奴は。」

声と共に、植物の体が真っ二つに割れる。
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