第15章
「ヘップシ!!」
急に鼻がむずむずしてくしゃみをしたら、それなりに近寄ってきた子どもが離れてしまう。
「…あ、わりぃ。」
威嚇の姿勢と表情を見せるその様に、ノイはここまでかと持っていた菓子を床に置き、そこから離れる。
暫くじっとノイの動向を見ていた子どもは、ノイが調理の作業に入るのを見てこちらに来ないと確信したのか、すぐに菓子に喰らいつく。
遠目でそれをノイは観察していると、その顔がちょっとだけ緩む。
(…この味付けは好きみたいだな。)
この一週間、どうにかこうにか子どもに対してノイはその細くなり過ぎた体を子どもの普通の体型に出来ないかと食料面で試行錯誤していた。
子どもが好きそうな味、食べ方が分かりにくい様なものは避ける、バランスはそっちのけでとりあえず腹に入れてくれそうな物…といった具合に、船の上という制限がある状態でもどうにか食べて貰える様に気を配る。
(スプーンやフォークみてぇな道具は全く使わねぇし…アイツからクレームが来るが、素手で食って貰うしかねーな。)
他のメンバーもノイ自身も思っているが、この子どもは人間とは思えない動物的な行動が目立つので、船長に聞くとそもそも人間扱いされていなかったからではないかと答えられた。
『きたねぇせまい檻の中にいてさー、身動き出来ねぇ様に四肢縛られているわ、餌の皿は腐りかけるわ…あ~確か早く死ぬように毒入りを出していたってよ…だが、察せられて食わなくなっていたらしい。』
作りながら船長の言葉を思い返し、ノイは基本的に無表情なその顔を嘲笑に変える。
「―どこにでも、嫌な親っているモンなんだな。」
自分の親は知らない。
生まれ落ちたその瞬間に捨てられていた、らしい。
これまで生きてきた事が奇跡の様な過程を経て、ここに彼はいる。
でも、こうして船に来たきっかけ…そして、そのまた原点の記憶が過り、頭を振った。
「うー。」
声がして視線を向けると、食べ終えたのか出来る範囲で近付いて催促してくる子どもがいる。
「…ま、先は腹が膨れてからだな。」
熱々なものだと火傷するので貯蓄用のクッキーを出すと、すぐに食べ始めた。
その姿を見つめながら、彼は小さく誰かの名前を呼ぶ。
それは、もう届かない事を知りながら。
急に鼻がむずむずしてくしゃみをしたら、それなりに近寄ってきた子どもが離れてしまう。
「…あ、わりぃ。」
威嚇の姿勢と表情を見せるその様に、ノイはここまでかと持っていた菓子を床に置き、そこから離れる。
暫くじっとノイの動向を見ていた子どもは、ノイが調理の作業に入るのを見てこちらに来ないと確信したのか、すぐに菓子に喰らいつく。
遠目でそれをノイは観察していると、その顔がちょっとだけ緩む。
(…この味付けは好きみたいだな。)
この一週間、どうにかこうにか子どもに対してノイはその細くなり過ぎた体を子どもの普通の体型に出来ないかと食料面で試行錯誤していた。
子どもが好きそうな味、食べ方が分かりにくい様なものは避ける、バランスはそっちのけでとりあえず腹に入れてくれそうな物…といった具合に、船の上という制限がある状態でもどうにか食べて貰える様に気を配る。
(スプーンやフォークみてぇな道具は全く使わねぇし…アイツからクレームが来るが、素手で食って貰うしかねーな。)
他のメンバーもノイ自身も思っているが、この子どもは人間とは思えない動物的な行動が目立つので、船長に聞くとそもそも人間扱いされていなかったからではないかと答えられた。
『きたねぇせまい檻の中にいてさー、身動き出来ねぇ様に四肢縛られているわ、餌の皿は腐りかけるわ…あ~確か早く死ぬように毒入りを出していたってよ…だが、察せられて食わなくなっていたらしい。』
作りながら船長の言葉を思い返し、ノイは基本的に無表情なその顔を嘲笑に変える。
「―どこにでも、嫌な親っているモンなんだな。」
自分の親は知らない。
生まれ落ちたその瞬間に捨てられていた、らしい。
これまで生きてきた事が奇跡の様な過程を経て、ここに彼はいる。
でも、こうして船に来たきっかけ…そして、そのまた原点の記憶が過り、頭を振った。
「うー。」
声がして視線を向けると、食べ終えたのか出来る範囲で近付いて催促してくる子どもがいる。
「…ま、先は腹が膨れてからだな。」
熱々なものだと火傷するので貯蓄用のクッキーを出すと、すぐに食べ始めた。
その姿を見つめながら、彼は小さく誰かの名前を呼ぶ。
それは、もう届かない事を知りながら。
