第15章

その発言によって、その場の空気が止まる。
「は…子ども?」
先程走り去った様子では、確かに四つ足を使って移動していたのではと恐る恐るその姿をサナは確認しに行く。

その隠れている場所に居たのは確かに。
腐臭を纏い、限界までやせ細り、眼をギラリとこちらに向け、出された食べ物を喰らっている裸の子どもだった。

(貧困層の子どもを何度か見た事くらいはあるけれど、こんなに酷い状態の子どもは見た事が無い…。)
自らが想像出来ない程の体験をしてきたであろう子どもを目にして、サナはすぐに顔を真っ青にして船長達のいる食堂入口に戻って来る。
「―慈善活動なんて、らしくないですね。」
子どもに染み付いた匂いに吐き気を感じながら、サナは船長に悪態をつく。
「あれだけ酷い状態の子を引き取って、どうするつもりですか?…そこそこ食わせてから転売でも?」
しかし、船長はサナの悪口にダメージを受ける事無く、今度はメソドにその子どもを見に行く様に指示を出す。
「…あれだけ警戒されていると、触診も出来ないですが。」
「いんや、見に行くだけで良い。」
それで感想を教えて?と両手を合わせておねだりをされ、げんなりした顔を見せた後、その言葉に従い、彼もまた子どもを見に行く。
メソドは顔色一つ変えないまま、真っ直ぐ戻ってきた。
「別に…極度にやせ細っているだけの子どもに見えますが…。」
おう、そうかと船長は満足そうに頷いた後、やっと答えを口にする。

「アイツさ、売りモンだったんだよ…なんでも『人によって形を変える生物』だってさ。」
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