第15章

出口が出来るのを待ちわびていたのか、その生物はすぐにその小さな隙間を半ば無理矢理こじ開けて出て来る。
「っ!」
それが目の前に迫り、すんでのところでノイは後ろに下がり距離を取った。
襲い掛かってくるかと構えるが、相手は見向きもせず、すぐに四つ足で部屋から逃走してしまう。
「ちょ、何ですかアレ!?」
一瞬過ぎてどんな動物かも分からずサナが船長に聞くが、彼はそのまま無言でその生物を追う為二人を自分の部屋に残し先に出てゆく。
「…あれは」
「ちょっとぼーっとしていないで貴方も追って下さい!」
責め立てるサナの声に少し渋い顔を見せるも、黙ってノイはサナと共に動いた。

「―言っておくが、オレが来た後にはもうこうなっていたからな。」
出来上がった食事が並ぶ食堂、いつもなら美味しそうな匂いが立ち込め、比較的清潔な状態が維持されている場所なのだが、小さな来訪者によってそこはもうぐちゃぐちゃになっている。
テーブルの上にあったテーブルクロスや皿は落ち、用意してあった食事は飛び散り、後はその食事を踏んだのか、小さな足跡がそこら中に広がっていた。
ノイの食事の知らせを先に受けていたメソドは、じとりと後から来た3人を睨みつける。
「理由は後で聞く…が、アレをどうにかしてくれ。」
メソドが指差す先には、食堂隅の見えにくい箇所にいる蠢く影。
隠れてはいるものの、自分が散らかしたご飯を食べているのかねっちゃねっちゃと音がする。
その光景を見て先にリアクションを出したのは、誰もが美形だと頷くその顔を真っ青に染めたサナ。
「…あ、こんな……野郎4人で綺麗のキの字も無かった食堂をやっとのことで改装してずっと保ってきたのに………こんな、こんな仕打ち……………。」
完全に魂が抜けている状態になっていて、美形は完全に使い物にならなくなってしまう。
「いや~結構酷いな!」
他人事の様に大笑いする船長、メソドはその様子を白い目で見つめているだけ。
そこでずんずんと先に進んでいったのは、この部屋を主に使っている男だった。
ノイは音のする方へ進んでゆき、距離を取ってその姿を確認すると、調理場へ進み、置いてあったおかわり用の鍋を残っていた器に入れ、その生物の元まで運んでゆく。
また逃走をされるのでは、と他のメンバーが逃げ道を塞ごうとする中、ノイは「食え。」とだけ言い、近くの床に置いてすぐさま離れる。
「…何をしたんですか?」
その一連の行動を見て、確認の為サナが声を掛けると予想通りの言葉が返ってきた。
「腹が減っていたみたいだから、食わせた。」
この男、飯と喧嘩の事しか頭に無いのか、と出かかった言葉をサナはどうにか腹の内に収める。
「船長。」
ノイは船長に目を向け、話し掛けた。

「あのガキ、どこで拾って来たんだ?」

その真意を聞く為に。
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