第13章
いまだに混乱している頭をどうにか働かせながら、ふらふらした足取りで医務室から出てきたサナは行くべきでは無い場所へ辿り着く。
最初は煩いと思っていた喧騒はすでに下火となっていた。
「何で…ッ、数はこっちの方が多かったはず」
全部言い終わる前に巨木の様な足が体ごと薙ぎ払う。
「………。」
暫く反撃が来ないかと身構えていたようだったが、相手が気絶したと分かり、メソドに無言でその相手を持ってきた。
「…こういう時は、あの人の目は正しかったんだと分かるな。」
受け取ったメソドは襲ってきた賊を縛り有り金や武器をあるだけ奪った。
彼は彼で、小柄な体躯ながらも船長と2人で航海してきた時間は伊達ではなく、何人も毒薬を塗ったナイフや針で刺し再起不能状態へ追いやっていた。
「おー、終わった?」
そこで賊の船へ単身乗り込んでいた船長が帰ってきた。
「ええ。」
「流石の手際…というか、想像以上なんだけど。」
「それは貴方にも言えるかと。」
メソドが指摘した通り、船長はこちらの船の倍の人数を相手してきたのだろう。
着用しているコートに赤黒いシミが付着している。
メソドの視線に気付き、すぐに顔を緩ませた。
「大丈夫だって、俺は無傷だから。」
ほらこれこっちの取り分、と向こうの船から奪ってきた金目のものを眼前に出した。
その場に置いた音でメソドのものよりもだいぶ多い事がすぐに分かる。
「それよりも…初めてにしては馴れていたな。」
メソドへ向けていた視線を船長はノイへ向ける。
「…船上で喧嘩した事はないっす。」
「いやー、でも戦い馴れているのはありがてぇよ。」
だけどとその顔に出来た傷をなぞった。
それはサナを守る際に出来たもの。
「誰にやられた?」
「…海に沈めたので、今浮いているかと。」
ふーんと対して感情の薄い返事をする。
しかし、その周囲の空気が揺らぐ。
「傷が残りそうなら言えよ、1人残らず服剥いで船ごと沈めるから。」
当たり前のように言い放つ。
ノイは顔色を変えなかったが、どう言葉を返せば正解のなのか分からなかったのでメソドに視線で助けを求めた。
メソドは一つ息を吐くとこう告げた。
「医師としては…適切な治療をすれば残りませんし、先程沈めた奴は船に戻って貴方が相手をしたかと。」
そりゃそうか、とからから笑い船長は下に置いてあった宝を持ち「後は任せる」と船の中へ戻っていった。
出口で様子を伺っていたサナとすれ違い「船の修理、頼むわ」と言い残して船の奥へと戻っていった。
船長と入れ違う形でサナは船の甲板へと出てきた。
つかつかとメソドとノイの方へ歩み寄り、その速さのまま行動を起こす。
パァン!!
乾いた音が、海にこだました。
メソドは目を丸くさせて、呆気に取られている。
音の正体はサナがノイの頬を打ったものだった。
「…っ、何で抵抗しなかったか…か?」
震える唇から溢れてくる。
今まで溜まっていたストレスは勿論、自覚していなかった彼に対する感情が。
頬はどんどん赤く染まってゆくのに、やはり表情の変化は無い。
それが余計にサナの中の泥を吐かせる。
「お前はいいな、そんな御粗末な頭でも恵まれた体格を持って自分が出来る役割もしっかりこなせているし。」
頭を中心に熱が体を駆け巡る。
ぎりり、と歯を剥き出しにしてひた隠ししていた思いが顔に出る。
「何より頭に来るのは…!」
口を動かしながら、サナは理解した。
自分がノイに対して抱えている感情の名前を。
「自分より弱い者の気持ちなんて微塵も考えられないところだよ!!」
羨望、だ。
叩いたのは自分の方だというのに、掌がずっと痛いのはそういうことだ。
自分が間違っている事なんて分かり切っていて、居た堪れなくなったサナは逃げるようにその場を後にした。
最初は煩いと思っていた喧騒はすでに下火となっていた。
「何で…ッ、数はこっちの方が多かったはず」
全部言い終わる前に巨木の様な足が体ごと薙ぎ払う。
「………。」
暫く反撃が来ないかと身構えていたようだったが、相手が気絶したと分かり、メソドに無言でその相手を持ってきた。
「…こういう時は、あの人の目は正しかったんだと分かるな。」
受け取ったメソドは襲ってきた賊を縛り有り金や武器をあるだけ奪った。
彼は彼で、小柄な体躯ながらも船長と2人で航海してきた時間は伊達ではなく、何人も毒薬を塗ったナイフや針で刺し再起不能状態へ追いやっていた。
「おー、終わった?」
そこで賊の船へ単身乗り込んでいた船長が帰ってきた。
「ええ。」
「流石の手際…というか、想像以上なんだけど。」
「それは貴方にも言えるかと。」
メソドが指摘した通り、船長はこちらの船の倍の人数を相手してきたのだろう。
着用しているコートに赤黒いシミが付着している。
メソドの視線に気付き、すぐに顔を緩ませた。
「大丈夫だって、俺は無傷だから。」
ほらこれこっちの取り分、と向こうの船から奪ってきた金目のものを眼前に出した。
その場に置いた音でメソドのものよりもだいぶ多い事がすぐに分かる。
「それよりも…初めてにしては馴れていたな。」
メソドへ向けていた視線を船長はノイへ向ける。
「…船上で喧嘩した事はないっす。」
「いやー、でも戦い馴れているのはありがてぇよ。」
だけどとその顔に出来た傷をなぞった。
それはサナを守る際に出来たもの。
「誰にやられた?」
「…海に沈めたので、今浮いているかと。」
ふーんと対して感情の薄い返事をする。
しかし、その周囲の空気が揺らぐ。
「傷が残りそうなら言えよ、1人残らず服剥いで船ごと沈めるから。」
当たり前のように言い放つ。
ノイは顔色を変えなかったが、どう言葉を返せば正解のなのか分からなかったのでメソドに視線で助けを求めた。
メソドは一つ息を吐くとこう告げた。
「医師としては…適切な治療をすれば残りませんし、先程沈めた奴は船に戻って貴方が相手をしたかと。」
そりゃそうか、とからから笑い船長は下に置いてあった宝を持ち「後は任せる」と船の中へ戻っていった。
出口で様子を伺っていたサナとすれ違い「船の修理、頼むわ」と言い残して船の奥へと戻っていった。
船長と入れ違う形でサナは船の甲板へと出てきた。
つかつかとメソドとノイの方へ歩み寄り、その速さのまま行動を起こす。
パァン!!
乾いた音が、海にこだました。
メソドは目を丸くさせて、呆気に取られている。
音の正体はサナがノイの頬を打ったものだった。
「…っ、何で抵抗しなかったか…か?」
震える唇から溢れてくる。
今まで溜まっていたストレスは勿論、自覚していなかった彼に対する感情が。
頬はどんどん赤く染まってゆくのに、やはり表情の変化は無い。
それが余計にサナの中の泥を吐かせる。
「お前はいいな、そんな御粗末な頭でも恵まれた体格を持って自分が出来る役割もしっかりこなせているし。」
頭を中心に熱が体を駆け巡る。
ぎりり、と歯を剥き出しにしてひた隠ししていた思いが顔に出る。
「何より頭に来るのは…!」
口を動かしながら、サナは理解した。
自分がノイに対して抱えている感情の名前を。
「自分より弱い者の気持ちなんて微塵も考えられないところだよ!!」
羨望、だ。
叩いたのは自分の方だというのに、掌がずっと痛いのはそういうことだ。
自分が間違っている事なんて分かり切っていて、居た堪れなくなったサナは逃げるようにその場を後にした。
