第1章(後編)


「さっすが、メソド!」

深くかぶっていた帽子を脱ぎ棄て、船長ことリヒトは称賛の声をあげた。
「…別にこんなことどうってことないですよ。」
少し不貞腐れたように返すメソドの頭を船長は駆け寄り撫でた。
「よ~しよし、いい子だな~。」
「黙れ。」
メソドはヒュースに強めの眠り薬を付けた針を刺し、見事ヒュースを眠りへと誘ったのである。
「まさか自分が屋敷から離れている間に運び込まれているなんて夢にも思わなかっただろうな。」
「まぁ、最愛の奥様がいなくなったら自分で探しに行くだろうっていう意見に救われましたね。」
そう言ってメソドは物置部屋の入り口付近を見る。
そこには10歳くらいの男の子がいた。
「…サム君、だっけ?」
船長が呼ぶとサムはコクリと頷き、こちらに寄ってきた。
「ありがとうね、色々教えてくれて。」
「…マツリねぇちゃんに頼まれたから。」
サムは元々島民側の味方だった。
マツリが宝を盗んでいると判明しても寧ろサムは率先してマツリに協力し、屋敷の経路や宝の在りかを教えていた。
更に言えば、警備員たちも協力者で警察だと紹介されればヒュースは疑う事もしないと言われて実行した。制服をサナが見たことがあったので、手作りをしてそれを着た。
サムはすぐ近くに横たわっているヒュースを見下ろした。
「本当にいいのかい?」
「…何が。」
「今からこの人は領主なんかじゃなく、ただの犯罪者になるけど。」
「元からじゃん。」
そう言って、「はい。」ととある書類を船長に渡した。

「僕も、この人も、お互い親子なんて思っていないから。」

サムが呟くと、船長は寂しいような顔をしたがサムの頭を優しく撫でた。

「さぁて、あっちも片付いた頃かな…?」
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