第12章

恐らくノイが捕まえた盗人の仲間達なのだろう、警官達から逃げている時点でもはや確定されたようなものだった。
「そこどけや!」
悪事が暴かれたと分かったのか、取り繕う事も無くやけっぱちになったのか逃げきろうとする。
「嫌よ、だって貴方達を捕まえられないもの♡」
ジャラ、と重量のある音がしたと思えばリンの右腕がしなるように動く。
すると、目の前にいた犯罪集団が魔法にでもかかったかのように一斉にこけてしまう。
「はぁ~い、警官の皆もお願いね♡」
心得たとばかりに各々取り出したのは、物騒な武器…ではなく。
「な…んです、アレ。」
「まーある意味名物というか、なんというか。」
ラッキーな光景だから見ておけと言う船長と、こちらは見たくないというように顔を背けているノイを見てから、じゃあ…とマツリは見る方を選択する。
先程盗人達を転ばせたのは、リンの持つ警棒…しかし、ただの警棒だった訳では無く改造が施された物のようで、中から鎖が飛び出せる仕組みになっていた。
(…鎖もピンクだし、なんかキラキラした物が貼り付けてあるけど。)
そこはリンの譲れないところなのだろうかなどど思っていたのだが、追い掛けていた警官達が出してきたのは。

各自思い思いに飾り作ってきたような、武器だった。

「観念しなさーいっ!」
桃色に塗った刺股を使い、犯人を拘束する人物がいれば。
「こらこら…イケナイ子ねぇ。」
抵抗しようと暴れる相手に対し、暴力には暴力とばかりに両手にハートの意匠施されているナックルでぶん殴る警官もいる、更には。
「マジカル☆ビューティーアターック!」
何か呪文らしき言葉を言いながら星が描かれたハンマーで犯人を気絶させようとする者もいる。

何とも言えない光景に、かなり顔を引き攣らせながらマツリは船長に聞く。
「…あの、この島って外部からの武器持ち込みは禁止していましたけど、現地の人達は大丈夫なんです?」
その言葉にあーと船長は少し言葉を探してから、口を動かす。
「武器は駄目だ、ここの住人でもな…だがアレは違う。」
アレとは警官達の事だろうかと考えていたら、次の言葉が飛んできた。

「可愛い武器なら、問題無いんだとよ。」

言われてみて、再度彼等が持っている武器を見てみる。
確かにどれも自らのファッションの一部かと思われるような、機能性というよりデザイン性を重視した物だらけ。
犯人達を鎮静化させてゆく警官達を見守りながら「ソウデスカ。」と答える事しか出来なくなったマツリだった。
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