第12章

ノイ、海賊の料理人。
見た目は顔も体も厳つく、まさしく男らしい様相の人物。
それが今。

「いや~この島でしかこんな格好で出歩けないよな、今のお前完全に不審者の塊だな!」
「アンタも似たようなモンだろ。」
こめかみ付近の血管がピクピク蠢いているが、頭にはピンクのワイドカチューシャが付き、首にはリボンが巻かれ、トップスは淡い色のブラウス、ボトムスにひらひらとしたスカートに裾にはレースがびっしり付いている、そして白い靴下とパンプスをその強靭な体に身に纏っていて、違和感が強烈なその姿に船長は爆笑している。
「ひ~…あー笑った笑った。」
「今日の晩飯無しな。」
悪かった悪かったと謝り、船長は彼に声を掛けた。
「で、ある程度の事情聴取は済んだのか?」
「おう…あとはぶっ倒した男が起きたら処遇が決まるんだと。」
「も~せっかくサナちゃんが一生懸命作ったのに、こんなに汚しちゃって~。」
後ろからひょっこり現れたリンに、ノイは顔を引き攣らせる。
「じっとしてなさい、綺麗にしてあげるから…♡」
「やめろやめろやめろ!」
「お前こういう系統の人種苦手だよな。」
やんややんやとやり取りがあった後、息が上がっているノイを尻目に船長はリンに盗人について問う。
「んで、捕らえた奴以外に仲間とかはいなかったのか?」
「調査中ね…申し訳ないけれど、見つけたらお手伝いしてくれる?」
勿論成功報酬は払うわ♡と言われるが船長はうーんと首を捻る。
「あら、不満?」
「いや…そういう事じゃねぇんだけどよ。」
濁った言葉は何を示しているのか、それはすぐに分かる事となった。
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