第12章

ぜぇぜぇ、と切羽詰まった呼吸が続く。
リリア島に来る事が出来ない他の島から依頼され、島の生産物を盗りに来た犯罪者は逃げ続ける。
リリア島は美を貴ぶ島であり、それを蔑ろにする者達には容赦が無い。
故に自分達が作った商品を輸入する先も見定め、規定から外れた島は商品を出さず、一切その島に交渉の余地さえ与えない厳しいルールが設けられていた。
どうしても欲しい商品がある時、他所の島はこうした方法で強硬手段を取る。
「クッソ、船を間違えた…!」
彼は追手から逃げつつ、言葉を零す。
(普段なら間違えねぇのに、何だってこんな時に…しかもあんなバケモンが潜んでいる船だったなんて…ッ!?)
突如後ろから来た衝撃に体が揺らぎ、倒れてしまう。
思いっきり地面と歯が当たり、血の味が口内を満たしてゆくのを感じながら男は顔を上げると。

「盗んだもん返せ、クソ野郎。」

ヒッと上がった悲鳴は、蹴り上げた音にかき消された。
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