第12章

「そこから二週間…みっちり扱かれて、仕舞いには店員の仕事だけじゃなく、言葉巧みに言い包められてモデルの所作まで叩き込まれましたね。」
時は今に戻り、サナは懐かしいと呟く。
「あら、所作の指導だって店員の仕事の内よ。」
しれっと返すが、シィーの指導はとても厳しいもので、商品を傷物にしたという自分の失態や、自分の身分を周りに告発されてしまうかもしれないという恐怖心が無ければプライドも捨ててでも逃げ出していただろうとサナは思い返す。
それでもシィーから受けた教えは後になってサナの役にとても立つ事になる。
「自分の立ち振る舞いを見直す事は、自分の身を隠す術を知るきっかけになりましたし、言葉遣いもここで定着しましたし…。」
「教えた事、活躍出来る場があって良かったわ。」
どんな事に使っているかは聞かないでおくけれど、と小さく言われサナは苦い笑みを浮かべた。
「モデルにはなりません…が、先生やここで会えた人達がわたしの狭かった視野を広げて下さってとても恩義は感じていますよ。」
持っていたバッグから音も無く出される。
「あの子達のアクセサリー代…そして、あの時傷つけてしまった商品の代金です。」
「前者はともかく、後者はきっちり払って貰ったけれど?」
首を傾げるシィーにサナは首を振った。
「先生、ここでの価格は確かにあの時のわたしでは払えない額でした…けれど、世界を回っている内にやっと分かったのです。」
爪先まで手入れが行き届いたその指を優しく開かせ、サナは金銭を渡す。
「貴方はお客の事を考えて、リーズナブルな価格で高い品質の商品を売っている…その事に。」
だから、と美形はその手を包み込みシィーの胸元まで送る。
「これは感謝と貴方への賛美です、金銭に代えるなんてと貴方は笑うでしょうが、わたしにはこの方法が最善と思えたので。」
真剣に見つめるその深いブラウンの瞳、その視線を受けてシィーは止まっていた口を動かす。
「50点。」
目を三角にさせ、仕方ないとばかりに金銭を受け取った。
「私の事をそこまで分かっている癖に、申し出も蹴るわ、昔の気遣いも無駄にするわ…破門になって正解よ、サナ。」
「弟子入りはしていないじゃないですか。」
余計な一言は要らないわとそっぽを向かれてしまい、ガーナとマツリが戻ってくる前に師の機嫌を取り戻せるだろうかとサナは困ったような、それでいてどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
22/41ページ
スキ