第1章(前編)
「じゃあ留守番よろしく。」
「行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
「寄り道するんじゃねーぞ、特にガーナ!」
「分かってるもん!!」
と2人は船を降り、商店街の方へ向かった。
「……メソド。」
「何?」
「あ、あのね…その…。」
「おやつでしょ、でも少なめにな。」
パァッとガーナは目を輝かせ、走って行き
「早く早く!!」
とメソドを呼んだ。
そして内心、やっぱりガーナには甘くしてしまうなぁと思いながらメソドはゆっくりと歩いて行った。
「いらっしゃい、いらっしゃい!!安いよぉそこのお兄さん、お嬢ちゃん!見ていきなよ!!」
「新鮮な魚、全部揃っていますよ!どうですかぁ!!」
「野菜、今日収穫したばかりどうだい!?」
と様々な声に溢れている商店街を2人は歩いていた。
「すごい活気のあるところだねぇ、静かな島かなって思ってたけど想像と全く違ったよ!」
「あ、ああ…。」
「メソドどうしたの?」
「え、あ…大丈夫だ。うん、俺も想像してたのと違ったなぁ。」
「うふふ、メソドがビビっているでしょ?大丈夫!!ガーナがメソド守ってあげるもん!」
「それは頼もしいな。」
えっへんと胸を張って歩くガーナを見ながらメソドは少し気になっていた。
(俺達以外に客がいない・・・何か良く出来た茶番みたいだな。)
とは思ったが、島民達は特に悪意はない様に見えた。
(何だ、この違和感は・・・)
「メソド、おいしそうなキャンディがあるよ!!」
「見てきなよ。」
「うんっ!」
お菓子の店に直行したガーナを見ながら、メソドは考えを巡らせた。
(誰か…見てたのか?俺達の事を…だが、見えたとしても、俺達が来るまで間に合わないはず…。)
「メソド~これ買って~!」
「あ…はいはい。」
(何にしても、一回皆に報告だな。)
「どう、売れた?」
海賊の2人が港の方向へ行くのを見届け、マツリはさっき話をした馴染みの漁師のところに行っていた。
「おぉ、マツリじゃねぇか!」
「海賊船は小さいからたいしたお金は稼げなかったと思うけど…。」
「いや、何人いるのかは知らねぇが、一家族分は買っていったぜ!」
「そう…。」
「一応、武器らしき物も持ってなかったみたいだ。何心配する事はない、もし何かしようと思うなら、一般人を装ってこんな小さな島になんか来ないさ!」
「その通りだよ、マツリちゃん!!」
店の奥から漁師の妻が出て来た。
「がらの悪い海賊は脅しに来るようなもんだけど、ああやって弱そうな2人を遣わせるっていう事は多少マシな連中だろう。」
「そうかな…。」
「そうだよ!」
妻がマツリの背中をドンドンと叩く。
「いっ…痛いよ、もうちょっと弱く…。」
「ああ、ごめんごめん!」
と言って妻は屈託なく笑った。
「それに」
漁師が付け足す。
「この島には頼もしく美しい女神様がいらっしゃるからな!!」
それを聞いたマツリや妻、そして周りにいた人達は一気に静かになり次の瞬間。
『アッハハハハハ!!』
とマツリを除いた皆が一斉に笑い出した。
「ちげぇねぇ!」
「俺らはその女神様の守護を身にずっと受けているな!」
「ありがてぇ事よ!」
と口々に言った。
そしてマツリはその様子を
「………もう。」
と苦笑いをしながら見ていた。
