第12章

「先生…どうしたの、あんな綺麗な人ナンパしちゃって…。」
帰ってきて早々ひっそりと声を掛けたのは、当時シィーの弟子の一人だったリンだ。
リンはこの店で審美眼を極めてから厳しい試験を受け、現在関所の職員として勤務する事となる。
当時からピンクを着ていると言っても過言ではないファッションに身を包んだ彼は、ずいずいとシィーに詰め寄った。
「行きたかった店に出入り出来なかったみたいだから、せめてウチに商品があるかもしれないって言っただけよ。」
「なるほど~確かに綺麗だけど、氷の表情しているものね。」
リンの言った事は的を得ていて、ここに来てからの彼は、手作り用に仕入れた商品をじっと見つめどれを買おうか悩んでいる様子ではあるが、まったく表情が変わらなかった。
「そこの貴方。」
サナが何か気になったのか、近くにいるコノンに声を掛ける。
「どうしたんですか、つんつんさん。」
「…この生地、どんなものから出来ているのか、教えて貰っていいですか。」
突然愛称で呼ばれ反応に戸惑う様子を見せるも、構わず本題を口にした。
「こっちは~むしさんのいとでつくられてますね~リリア島のめいさんひんのひとつです~。」
「ちなみに値段は?」
「うんと…。」
近くに置かれている値札をコノンが指差すと、美形の顔に明らかな歪みが出る。
「…よさんおーばーです?」
無理して買わなくても良い、そういった意味でコノンは声を掛けるもキッとした表情となったサナは食って掛かるように「そんな事は無いです。」と返す。
言葉こそ丁寧なものの、明らかに不機嫌な感情が滲み出ていて近寄りがたい雰囲気が店にじわりと滲んでしまっている。
「―そんな対応じゃ、確かに客として扱われないわね。」
重たい空気が立ち込める中、痺れを切らしたシィーがその口を開いた。
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