第12章

酷く、印象に残った。
着ている服は元ある服にレースを取って付けたような粗末な物だったのに、それを着ている人間は異様な程綺麗で。
その引き付けられる容姿を持った人物は、ある店を睨みつけていた。
「旅の人、ですか?」
街中まで降りてきて用事が済んだので後は帰るだけだったが、どうにも気になってシィーはその人物に声を掛ける。
渋面だったその人物はこちらに気付くと、さっと表情を取り繕いまさしく余所行きといった顔となった。
「そうです…すみません、通行の邪魔ですよね。」
すぐにその場から移動しようとするその背中に待ってと呼び止める。
「もしかしたら、何かお求めの物があったんじゃないの?」
「………。」
男が見ていたのは、この島でも高級店とも言える店で、故に客を見極め店に合わないと断ぜられた者は店に入る事さえ出来ない。
他にも同じ対応をする店はあるが、ここは特に厳しい店で有名だった。
あの渋い顔からして、この人物も同じ目にあったのだろうと察したシィーはそのまま口を動かす。
「気になるものがあるなら、代理で行ってきましょうか?」
「…いいえ、結構です。」
身から出た錆なので、と断ろうとする彼をどうにも放っておく事が出来なくて、シィーはならばと別案を出した。
「私の家も店なの、もし求めているものがあるなら用意出来ると思うわ。」
その言葉を聞くと、彼はピクリと反応し少し考える素振りを見せた後、静かにこくりと頷く。
こうして、シィーはびっしりとした棘を纏っている美形を店に招く事にした。
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