第1章(後編)


「『税を納められないのならば、宝で納めろ。』と言われて。」
「…で、それを取り返しているのが、お前ってことか?」
ノイが聞くと、マツリは頷き説明した。
「最初は黙っていました……権限は向こうにあるし、抵抗したらこっちが悪者になってしまう、けれどあたしたちにとって奪われたくない大切なものもあったんです。」
「…その領主の妻は何も言わなかったのか?」
「自分の利益に繋がることしか考えていない人なんです、掛け合ってはみたのですが全く意味もなく…。」
はぁと溜息をつくと、他の島民たちが声を上げてきた。
「領主の野郎はあの女狐にまんまと騙されているよな。」
「ああ、絶対踊らされているな。」
「可哀想なのは息子さんだよ…。」
口々に溜まっている領主やメアンの不服を言い合う。
「…これで理解出来たでしょうか?」
説明は終わったとばかりにマツリは船長に近づく。
「それでも罰を受けるべきはあたしです、ここで捕まえればお望みの報酬も得ることができ」
「マツリ!!」
「…でも。」
まだ言うのかとばかりに島民たちが食ってかかるように詰め寄るが、マツリは引かない様子でいた。

「そんなもん興味ねぇ。」

スパンと吐き捨てるように一言その場に響いた。
「え…?」
「興味ねぇよ、報酬とか。」
船長はマツリに一歩歩み寄った。
「確かに、多少の金稼ぎとしてマツリちゃんを捕まえようとしたけど、それよりも興味が注がれるもの見せてもらったし。」
「…はい?」
船長はくるりと後ろの仲間たちを見てにやりと意地悪く笑った。
「いいよな?」
「…どうせ、止めても聞かないくせに。」
「勝手にしろ。」
「勝算はあるんでしょうね?」
「むにゃむにゃ…。」
各個人の反応を見て満足した船長は、マツリに向き直り提案した。

「もし、この件を無事に解決できたなら、マツリちゃんのその術について教えて欲しい。」

「いいかな?」と許可を求める言葉とは正反対に自信満々の様子で告げる船長にマツリはたじろぎながら、返答した。

「や、やれるものなら…。」

目の前に映るのは人の形をした悪魔かもしれない、それでもこの状況を打開できれば、もう悪魔との契約でもなんでもしてやろうと半ば自暴自棄になってそんな事を言った。
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