第1章(後編)
「事の始まりは、領主が結婚をした頃に遡ります。」
海賊たち全員の縄を解き、マツリをはじめとした島民たちはその周りを囲っていた。
マツリは海賊たちの目の前で、怪盗をし始めたのか説明を始めた。
「えっと、確かメアンさん…でしたっけ?」
「そうです。」
「それまでは何も無かったのか?」
「ええ…というかこの島自体が平和だったので、問題が起きようにも無かったんです。」
けど、とここでマツリは顔を曇らせた。
「結婚して領主は自分を着飾るようになりました、きっと綺麗な奥さんを逃さないようにしようと思ったんでしょう。」
「…あの顔でか。」
「ノイ、静かにしてろ。」
「…まぁ、自覚はしてたのか分かりませんが、次は彼女に色々な物を貢ぐようになりました。」
ここまで来ると、何となくリヒトは察しが付いてきた。
「つまり、妻に対して見えを張るようになってそれがエスカレートして、島の経済が破たんしてきたのか?」
「まぁ、おおよそはそのような感じです、増税したり、魚の漁獲量のノルマを増やしたり色々されました。」
少し息を吐いて、マツリは話を続けた。
「でも、そのうち更にとんでもないことを始めてしまって。」
「とんでもないこと?」
「………宝、か。」
船長の呟きにマツリは頷いた。
「…なるほど、話には聞いてたが確かに、失礼だがこんな小さな島であんな豪邸でしかも宝を多く持っているなんて、おかしな話だとは思ったが。」
「…なぁ、どういう事だよ。」
少し分からなくなったのか、ノイがサナに話しかけた。
「領主という職は公務員にあたるので、偉い立場ではありますが給料はそれほど高くはありません、領土で違いはありますが・・・なので、大金を湯水のように使用することはできないはずなのです。」
「つまり…?」
そこでマツリは極め付けの一言を言い放った。
「領主は私たち島民が所有していた宝を、合法的に奪ったのです。」
