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第11章

何やら船の中で高い音同士がぶつかり合うような声がする。
業務中にも関わらず昼寝をしていた船長は、薄らとその目を開く。
「…まぁ、声の主達は言わずもがなだが。」
珍しい事が起こっているようだと見張り台で横になっていた彼は、そこから移動し始めた。

「何でけしちゃったの!?」
「後で別の紙に描こうと思ったから!」
キンキン声が響く女子部屋の前には、船長が辿り着く頃には既にギャラリーが出来ていた。
「よっ。」
「よっ、じゃないわよこのサボリ魔。」
険しい顔をしたサナが船長の襟元を掴みぐいと少し開いているドアの近くまで引き寄せる。
「アレ…何とかしてよ。」
「え~お前らでも無理なの?」
サナの後ろにはノイもいるが、彼も首を振った。
「さっきまで部屋にいたけど、二人ともあんまりにも険悪で『二人には関係無いでしょ!』って追い出されちゃったのよ…。」
ちなみにメソドは船長の代わりに見張りに行ったので、この場にはいない。
「こうなった原因はよく知らないけれど…仲裁にも入れないし。」
だからリーダーである船長に場を収めて欲しいというのがサナの考えなのだが。
「―いや、まだ無理だろ。」
こうして大人たちが見守っている間にも彼女らの喧嘩はエスカレートしているようで、ガーナが怒りのあまりにしゃっくりを上げながら泣き始めているような声が聞こえてきた。

その瞬間。

バンッ!と勢いよくドアが開き、マツリが飛び出す。
「お、い―」
ノイが呼び止めようとするも、構わず無言で彼女は廊下の向こう側へ消えていく。
「う゛…う゛わ~~~~~!」
部屋に残されたガーナの泣き声が、ただただ響いていた。
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