第1章(後編)


まっすぐにこちらを見るマツリを一瞥して、メソドは疑問を投げる。
「…なんで、俺だけ?」
「武器を隠し持っていたことと、さっき集会所に入ってきたときしきりに窓や出口、壁の傷を見ていたので…。」
船長とサナは武器を取り上げられたが、メソドは針を隠し持ち更に、集会所に入る際に壁の様子や傷を確かに密かに見ていた。
どこまで見られていたのか表情には出さないものの、メソドはぞっとした。
「…俺たちが逃げるなら、俺がきっかけになると思ったから?」
「そんな感じですね。」
相手はもう諦めたというように、両手を差し出し、拘束されるのを待っている。
メソドがどうしようか迷っていると、島民たちが声をあげてくる。
「待ってくれ、その子は悪くない!」
「寧ろ、俺たちを助けてくれた女神様なんだ!」
「いなくなっちまったら、俺たちが領主に…。」
様々な声が飛び交い、メソドは余計に困惑した。
すると、またあの男の呑気な声が聞こえた。
「えっと、マツリちゃんだっけ?」
「…はい。」
「とりあえず、俺たちの縄も解いて欲しいんだけど…。」
それからと、どこかワクワクした表情でこちらに訴えてきた。

「ついでに、ちょっと話聞かせてくれない??」

あからさまに感情が読み取れる声に、寝ているガーナ以外の海賊たちは嘆息をした。
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