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第10章

んぇ?と思わず返してしまったが、船長はぐいぐい詰めてくる。
「いやさー、一応他のメンツとかにも聞いてきたんだけど、そろそろネタ切れ気味でさ…折角だし、決めてよ。」
「でも…偽名、なんですよね?」
「だーかーら、適当でいいから決めちゃって!」
からからと笑いながら言われたが、マツリは少し考えた。
(名前…名前、かぁ。)
「本当に適当で良いのよ、ここで言っても船長が覚えているとは限らないし。」
酷い…と言われるも全く意に介さない様子のサナ、その隣で少女は口を開く。

「暁星(あけぼし)…なんて、どうでしょう。」

その言葉にぴくりと船長は動きを止める。
「何でその名前にしたの?」
「えっと、何となくなんですが。」
マツリも突発的に出たものだったらしく、理由を必死に集めている様子で話す。
「船長は星見が趣味だったなぁというのと…夜明けを意味する明星は、あたし達らしい星だな…って思って。」
彼がいつになく真剣な表情をしていたので、緊張しながら答える。
暫くその様子をじっと見ていた船長だったが、いつも通りのにやけ顔となった。
「―うん、いいんじゃない。」
「そうね、この海賊団には勿体無いくらい素敵な名前ね。」
マツリちゃんはセンスあるわね~と褒めてくれる船長とサナに少し照れた様子で顔を赤らめる。
「うっし、心機一転…暁星海賊団、理想郷探しに行くか。」
良い名前ありがとね~と去ってゆく船長の背中が、何となくいつもと違う様にマツリは感じた。

船はまた、新たな旅路を進んでいく。
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