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第10章

その笑みはまるで裁かれるのを待っているような表情だと、マツリは思った。
(…船長。)
彼はどのように返すのだろうか、倫理観は欠如している事もあるがそれでも法を理解する人間として対応してくれないだろうかと、彼の背中を見ながら彼女は考える。
経緯はどうであれ、これまで善行を積んできた人達なのだから。
うんとね、と頭をぼりぼり掻きながら彼は最初にこう言い放つ。

「そんな事あったっけ??」

その場に沈黙が訪れる。
誰も口を開けない中、唯一爆弾発言を放った男だけが続けて口を動かす。
「この島に前来た事は覚えているけどさ…ぶっちゃけ、そこら辺は覚えてないんだよね~。」
「え…でも、こんなに似せているのに…?」
流石に言い逃れは出来ないんじゃないのだろうかと、処される気でいた彼はご本人を目の前に戸惑ってしまう。
「う~ん…じゃあ俺達だったかどうかは置いといて、ありがとうの気持ちだけ貰っておくわ、どーも。」
「えぇ…。」
あまりにも軽い対応にどうすればいいのか分からなくなっている。
それは同じ仲間である海賊達も同じで、一様に船長に対し「どうこの場を収めるんだこの野郎。」とばかりの厳しい目線が注がれていた。
「ん~俺は全く気にしていないんだけどな、そっちが気になるなら…やるよ。」
何の事だろうか、と首を傾げる彼等に船長は発言する。
「セームド海賊団って名前…俺らは今後二度と名乗らねぇから、そっちが本物になっちまえよ。」
それで事は解決するだろう、とにやりと歯を見せて彼は笑った。
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