第1章(後編)
その言葉にその場全員が口を閉ざす。
「…確かに、その解釈だと辻褄が合いますね。」
サナが昨日のことを話し始めた。
「昨日、こちらの島の領主様の邸宅で警備をさせていただいたのですが、誰一人怪盗の姿さえ確認できていなかった…そうではなく、全員協力者ならスムーズに盗むことが可能ですよね。」
加えてとマツリに視線を移し、続けた。
「そちらのお嬢さんなら、領主にも気づかせず盗みを働くことも可能ですし。」
「な、なんの…!」
「ごめん、皆…。」
庇おうとした周りの島民たちをその一言で止め、マツリは前に出て、島民たちの方へ振り向く。
「能力のことばれちゃって…。」
言いにくそうにマツリが話すと、信じられないと言った顔で島民たちはマツリを見てきた。
「あの、お前の術が…!?」
「…嘘だろ?」
「何がどうして…?」
島民たちの狼狽える様子を見てから海賊たちの方へ向いた。
「あくまで、主犯はあたし一人。」
とことこと歩き出し、メソドの近くに寄ると、服の縫い合わせてある袖口を掴んだ。
「……!」
少しいじると太目の針が袖口から出てきた。
「ちょっと、借りますね。」
驚き顔を強張らせるメソドを尻目にそう言うと針を拘束していた縄に刺し、ほどいていった。
「きつめに縛ってあるので、使用させていただきました、すみません。」
「ちょ、マツリ…!?」
取り押さえようとする島民たちを今度はマツリが庇うように片手をあげ、動きを制した。
「捕まるのは、あたしだけで十分。」
