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第10章

船に火が付いたと聞いて、マツリは頭が真っ白になった。
咄嗟に花の向こうで繋がっているガーナの言葉に返事をする事が出来なくて、呼吸をするのに精一杯となってしまった彼女を見て、すぐにサナが変わる。
「横から失礼、今どんな状況なんですか?」
サナは汗が止まらなくなっているマツリの背中を撫でながら、情報を聞き出してゆく。
「―分かりました、直ちにそちらへ向かいます。」
花をマツリへ返すと、まずはとサナは指示をノイに伝える。
「ノイ、先程の二人の男性達と例の自警団の方々に船に火が放たれたと伝えて下さい。」
余裕があれば他の集まった人々にも招集を掛けて欲しいと言われ「分かった。」とすぐに彼は動き出す。
「マツリちゃん、落ち着いた?」
「…すみません、動揺して。」
慣れていないなら仕方ない、と彼は笑う。
「ま、こんな事に慣れてしまうのも嫌な事ですけれどね。」
場を和ませようとしているのだろう、どうにか強張っていた体を落ち着かせマツリはサナにもう大丈夫と視線で伝えた。
「勘違いしていたようですが、火を付けられたのはわたし達の船では無く、別の船ですからね?」
「え゛。」
「電話の向こうで間違えて伝わってしまったのではないかと慌てていましたよ。」
まさしくその通りで、マツリは青ざめていたその顔を今度は赤くする。
「さて、わたし達は火を消す為に現場へ行きますよ。」
「はい!」
火が大きくならない内に、彼らは現場へと走り出した。
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