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第10章

「ふ、あぁ…。」
緊張が続いている外を知るものかというように、のんびりと海賊船の中であくびをする男が一人。
「船長、今日は眠らないで下さいよ。」
「分かってんよ~。」
そうは言ってもその顔には眠気が去らない様子で、目を瞬かせている。
件の放火魔の事で、念の為の対策で船長とメソドは夜になっても寝ずに起きて船周りの監視をする事にした。
しかし、船長は日頃から睡眠が安定せず常に目の下にクマがある状態の人物、少々今の状態は辛く感じている様子で、せめて眠気覚ましの飲み物を渡すくらいの情は掛けてやろうかと、メソドは船長の部屋を後にし調理場へと向かう、その途中。
「…?」
もう深夜に近い時間帯なのに、寝ていたはずの少女が起きている。
「ガーナ、トイレか?」
寝ぼけてこちらまで来てしまったのだろうか、そう思いメソドは声を掛けたが、彼女の顔が厳しいものになっている事に気づいた。
「…船長、起きてる?」
「あ、ああ。」
眠いから難しい顔をしているのだろうかと考えてしまったが、この船の防御の要である彼女は警鐘の一言を告げる。

「植物達が、怖がってる。」

どういう事か、それを聞く前にメソドは自身の鼻腔に届いた異変を知らせる香りを感じた。
「…ッ、煙か!」
窓から染み込むよう入ってきた煙に気付き、ガーナにハンカチで口を塞ぐよう伝え、彼自身はいつも付けているアームカバーで口を守り窓辺へと急ぐ。
(火元はここじゃない…だが、近くではある。)
ガーナが聞いた植物の声は恐らく他の船に火が付き、それが悲鳴となって彼女の耳に届いたのであろうと彼は推測する。
「ガーナ、アイツらにリンリン草渡してるな?」
「うん。」
すぐにメソドの質問の意図を察知した彼女は、すぐにくるりと来た道を戻りリンリン草の鉢がある植物達が並べられた部屋まで走り始めた。
「全く…おちおち休めないな。」
苦々しい顔をしながらメソドも足早に船長へ報告する為、部屋へと戻っていった。
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