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第10章

炎の揺らめきが見たい、最初はそんな純な欲だった。

危ないものだから、焼けてしまうからと離され、遠巻きで見る事しか出来なかったそれは、返って彼の好奇心を沸き立たせる事となる。
あれはどのように燃えるのか、この物質はどのような煙を出すのか。
突き詰めれば詰める程、予想外の事も出てきてマッチを擦る手が止まらなくなった。
勿論こんな事が周りに許される訳も無く家族からも咎められもしたが。

彼の炎への狂愛は止まらなかった。

「…あーあ、人が多いな。」
家族の手を逃れ放火魔となってしまった彼は、ずっと火を付ける実験場を探していたのだが、流石に実験を頻発し過ぎたのか警備員らしき人々が見えて口を歪める。
(人通りが多い所は出来ない、じゃあ…どうするか。)
ある程度街中で火を付けてしまっているので、そろそろ新しい実験をしたいと思っている彼の耳にある音が届く。

静かに響く、波の音が。

「内がダメなら外を攻めてみるか。」
新たな標的が決まり、男はスキップ交じりにそこへと向かっていった。
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