第10章
それから太陽が海に半分浸かり始めた頃、船の中では食欲を刺激する匂いが充満していた。
「ノイちゃんから頼まれたお店の持ち帰りご飯、しっかり人数分買ってきたからね~。」
帰ってきたばかりの為女装姿のまま上機嫌で買い物袋をサナは彼に渡すが、頼んだであろうノイの顔は晴れない。
「…本当は俺が買いに行きたかったんだがな。」
「仕方ないでしょー、わたし達のそっくりさんがここの島で有名人だったんだから。」
複雑な顔のまま大皿へとおかずを盛り付けてゆく料理人を宥めつつ、サナはすでに食卓に座っていた彼女達へ言葉を掛ける。
「気になって彼等についてリサーチしてみたけど…海賊とは名乗っていて、慈善活動をしているのは本当みたいね。」
いつもであれば美形の男として女性を対象に情報収集するサナであるが、時折女性として男を対象に話し込む事もあり、今回は有名人ということもありしっかりと情報を集める事が出来た様子だった。
「自警団“セームド海賊団”…リーダーはリートと呼ばれる船長似の男、他の構成員はメルノ、サタ、ノキ…いずれもわたし達の容姿と名前そっくりだわ。」
「サナさん見てきたんですか?」
「見てきたも何も、向こうから話し掛けてきたわよ。」
その言葉にマツリとガーナは驚くも、そういえばと彼等は見ず知らずの自分達に積極的に声を掛けてきてくれたのだから、余所者であるサナにも同様に接するのは同じ事かと納得する。
「ま、世間話程度だけれどね~ノイちゃんのそっくりさんと会ったけど、本物と違って『お綺麗ですね。』って言ってくれたわよ~。」
「社交辞令って言葉知ってるか?」
「その言葉を教えたのわたしって事忘れていないわよね?」
じわりと訪れた暗雲にマツリは慌てて話題を変えようと声を上げた。
「そっそれで!サナさんはそのままその人達と別れたんですか?」
それは、と話を続けようと口を動かそうとして彼は一度止める。
「ここから先は美味しいご飯を食べながらしましょ、そんなに暗い話題じゃないから。」
ぱちりと片目でウインクをするその様は、やはり食い入るように見ても男には到底見えなくて、マツリは思わずどうにかその技術を盗めないか少し考えてしまった。
「ノイちゃんから頼まれたお店の持ち帰りご飯、しっかり人数分買ってきたからね~。」
帰ってきたばかりの為女装姿のまま上機嫌で買い物袋をサナは彼に渡すが、頼んだであろうノイの顔は晴れない。
「…本当は俺が買いに行きたかったんだがな。」
「仕方ないでしょー、わたし達のそっくりさんがここの島で有名人だったんだから。」
複雑な顔のまま大皿へとおかずを盛り付けてゆく料理人を宥めつつ、サナはすでに食卓に座っていた彼女達へ言葉を掛ける。
「気になって彼等についてリサーチしてみたけど…海賊とは名乗っていて、慈善活動をしているのは本当みたいね。」
いつもであれば美形の男として女性を対象に情報収集するサナであるが、時折女性として男を対象に話し込む事もあり、今回は有名人ということもありしっかりと情報を集める事が出来た様子だった。
「自警団“セームド海賊団”…リーダーはリートと呼ばれる船長似の男、他の構成員はメルノ、サタ、ノキ…いずれもわたし達の容姿と名前そっくりだわ。」
「サナさん見てきたんですか?」
「見てきたも何も、向こうから話し掛けてきたわよ。」
その言葉にマツリとガーナは驚くも、そういえばと彼等は見ず知らずの自分達に積極的に声を掛けてきてくれたのだから、余所者であるサナにも同様に接するのは同じ事かと納得する。
「ま、世間話程度だけれどね~ノイちゃんのそっくりさんと会ったけど、本物と違って『お綺麗ですね。』って言ってくれたわよ~。」
「社交辞令って言葉知ってるか?」
「その言葉を教えたのわたしって事忘れていないわよね?」
じわりと訪れた暗雲にマツリは慌てて話題を変えようと声を上げた。
「そっそれで!サナさんはそのままその人達と別れたんですか?」
それは、と話を続けようと口を動かそうとして彼は一度止める。
「ここから先は美味しいご飯を食べながらしましょ、そんなに暗い話題じゃないから。」
ぱちりと片目でウインクをするその様は、やはり食い入るように見ても男には到底見えなくて、マツリは思わずどうにかその技術を盗めないか少し考えてしまった。