第1章(後編)


「大丈夫か、マツリ!?」

海賊たちの船の周りを囲っていたのは、島の漁師たちの小舟だった。
「何で、皆…。」
「ムマジさんから聞いたんだ。」
「…じっちゃんか。」
答えを聞いてマツリは納得する。
海賊たちに宣戦布告した後日、ムマジにその事を伝えた際猛反対を受けた。
(立場が違っていたら、あたしも同じことをするんだろうけど…。)
しかし、まさか島民の皆にも知れ渡っているとは知らなかった。
「全く無茶なことをして…。」
他の漁師たちもマツリに気付き、こちらに寄ってきた。
「マツリ、大丈夫かよ?」
「襲撃するなら、俺たちにも一言言ってくれよ!」
「お前がいなきゃ…。」
口々に文句を言われるが、マツリは嫌な気分はしなかった。
(…もうあんなことしないんだ。)
ふと過去のことが思い出され、軽く頭を振った。
「あ~抵抗しないから、もうちょっと優しくしてくれるかな?」
両手を縛られ、連行されていくさっきの海賊たちの声が聞こえた。
「いや、何様だよアンタ。」
「そもそも、俺たち被害者なんだけど…。」
「ノイ、ここでは何を言っても無駄です。」
「あ、すみません、その子は何もしてないので、縛るのは止して下さい。」
「むにゃ…。」
到底捕まったものとは思えない態度で、周りの漁師たちも少し戸惑っている。
素直に島民たちの言うことを聞くその様は、先程船の一部を壊してまで自分に切りかかりすぐに捕らえた人と同一人物とは思えない。あのような力があるのなら、たとえ筋肉質な男が多い漁師たちを掻い潜り、力づくでも逃げられそうなものだが。
(ずっと観察してたけど、やっぱりかなり変わり者の人ばっかりみたい…。)
しかし、安心したのもあってからか、マツリは海賊たちにすっかり毒気を抜かれたような気がした。
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