このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第9章

彼等が辿り着いたのは、上空の青がそのまま映る池だった。
「池…青い、ですが…。」
マツリのその瞳は、その池の中を既に見透かしている。
一見綺麗に見える池ではあるが、その水中に生き物はいない―いや、正確には生き物はいるのだが。
「死んでいるな。」
そのまま彼は臆する事無く前に出るので、マツリは念の為マスクの結び目をもう一度キツく結び直し共に向かう。
メソドは手袋を付け、一番近くに浮かんでいた魚の死骸を寄せ持ってきた袋へ入れた後、念の為に池の濁った水も採取する。
池の中はそれまで生きていたであろう魚や虫達の死骸が満ちていて、辛うじて水中で揺れている水草があるのみだったがそれも変色しているように感じ、まだ確定した訳では無いのだが、病の出所についてマツリはこの光景を見て原因はここだろうかと考えた。
「マツリ、臭い…感じるか?」
唐突に質問され驚いたものの、率直な感想を彼女は話す。
「これは…死体の腐った臭いじゃないんですか?」
「それもある…が、ここが病の原因とはまだ決まっていないからな、俺の鼻だと恐らく強い消毒剤が撒かれた臭いもする。」
恐らくだが、とメソドは言葉を続ける。
「島民がここから病が出たと勘違いして、消毒のつもりで撒いた薬が病どころか生き物まで影響を及ぼしてしまった結果…という事もある。」
「そんな…。」
「だから、正しい知識を学ぶ事は必要なんだ。」
使われていたであろう放置された水汲み用のバケツを見ながら、メソドは言う。
「思い込みで動いた末、戻れない結果に辿り着く事もある。」
20/26ページ
スキ