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第9章

そういう事であれば、と彼等は当初の予定を変更して感染症が流行しているジジ島に寄る事となった。
「…それで?」
渡された買い物メモと買い物袋を持ち、今から出発しようとするメソドは後ろをじろりと見やる。
「何で付いて行こうとしてる?」
その視線の先には、一瞬怯んだもののキッと見返すマツリがいた。
「様子次第で問題無いのですよね?…なら、あたしが付いていっても大丈夫だと思ったので。」
「別に…買い物頼みたいならここに書けばいいし、荷物運びを頼む程の量じゃ無い。」
「でも、メソドさんそれだけをしに行く訳じゃ無いんですよね?」
彼女の言葉に、メソドは顔を険しくさせる。
「見たな?」
「う…すみません、鞄の中見えちゃいました。」
マツリの透視能力は、見ようと思えば意のままに鞄の中身や人間の中身など見透かす事が出来るのだが、セーブしていないと勝手に見えてしまうので扱いには注意が必要だった。
「何をするかを知りたいのもあるのですが…その、メソドさんの事もっと知りたいと思って。」
「聞きたければここで聞けばいい。」
終始無愛想な対応を続ける彼にも、マツリはへこたれず両手を握りしめ向き合う。
「言葉じゃなくて実際に見て知りたいんです、貴方がどういう人で…どんな考えを持っているのか!」
迷惑な我が儘だと思われるだろう、けれどそれでも良いとマツリは自分の意見を通したいと彼の前に立ちふさがる。
自分を連れて行くか、倒さなければここを通さないとでも言うように。
彼から発せられる視線の色は変わらない、それを分かってもマツリは引く訳にはいかなかった。
面倒くさい、小さく呟かれた言葉が耳に届くのと同時。

バッとマツリの口元と鼻に布地が覆い被さる。

(これ!?…メソドさんお得意の眠り薬入りのハンカチじゃ!)
身の危険を感じ、薬を吸い込まないよう意識し頭をずらそうとしても、後頭部には既にメソドの手が逃がさないとばかりに抑えられていた。
「じっとしてろ。」
明らかな罠だと汗が流れ始めるのを感じながら、抵抗を続ける。
「…おい、息吸え。」
吸ったら眠ってしまうと思い込み青くなった顔で我慢していると、業を煮やしたのかぐいっと強制的に掴まれ手を後頭部へ触れさせた。
「あ…あれ?」
「だから吸えって言ったろ。」
そこには結び目があり、メソドはマツリに布地の簡易的なマスクを付けただけという事実が現れる。
勘違いしていたのが恥ずかしく、青い顔が赤い顔に変わったのを確認してからメソドは口を開く。
「問題無いとは言ってももしもの事があっても困る、俺に離れず付いてきてくれ。」
自身もマスクを準備しながら冷静に話すメソドにマツリは「…はい。」と先程と打って変わって小さな声で返事をした。
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