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第9章

「…なるほど、そういう事があったのね。」
先程起こった出来事をサナにも話すと、サナもノイと同様に頷いた。
「メソドちゃんらしいわね~。」
「サナさんもノイさんと同じ感想なんですね…。」
ガーナの感想は違うものになると思うが、恐らくこの調子だと船長に話しても同じ反応を返されそうだなとマツリは感じる。
「確かに…わたしの時も命を取る事に関して言及されたわね。」
やはりそうなのかとマツリは腕を組み考える、どうすれば自分もメソドも納得がいくような答えに辿り着けるのかと。
「でも彼がわたしに質問した事と、マツリちゃんに質問した事は…内容は同じだけれどちょっと違う気がするわ。」
「…どういう事ですか?」
うんとね、とサナはマツリにも分かりやすいように頭の中で言葉を整理してから告げる。
「マツリちゃんも聞いた事はあると思うけれど、わたしとメソドちゃんは尋問担当なのは知っているわよね?」
はいと彼女は返事をする。

尋問とは。
主にこの船を襲ってきた者達を拘束し、有力な情報を持っている者に対してその情報を話すよう誘導する事だ。
向こうが協力的なら仕事も楽なのだが、大概はゴロツキに野蛮な考えを持つ者が殆どの為情報を貰う事は簡単では無い。
あの手この手、時には手段を選ばず相手に情報を吐かせる仕事だった。
なお、一般人が乗る客船には手を出さない。

「メソドちゃんは薬も使って、わたしは言葉を使って精神的に追い詰めてするのだけれど…わたしがこの仕事と船で戦い始めた時に言われたのよ、お前は人を殺せるかって。」
無言で話す口元をじっと見つめているマツリに、サナはそのまま話を続ける。
「必要があれば、手を掛ける事が出来るってわたしは答えたわ。」
ぴくり、とマツリが口を動かそうとするも、そのままその口が閉じられた。
「―いいわよ、法や倫理的なものに絡む事だから、どう反応して良いか分からないわよね。」
彼女の気持ちをサナなりに汲み取った言葉を送るが、しかし彼は自分の考えを伝える。

「それでもわたしは、自分が一番大事…自分が生き抜く為に他の人の命が要るなら進んで獲っていくわ。」

それは、過去多くのものを他人から奪われても、それでも生きる事を止めずもがき苦しみながら己の居場所を探し続けた人間だからこそ出来た決断だった。
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