このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第8章

「マジで最初から最後まで捨て駒扱いか…しょーもねー奴らだ。」
散らばってしまった小銭を拾いながら、ノイは呟く。
「立てるか、お前ら。」
「あ…うん。」
ノイに促され、立とうとするも膝が笑って上手く立つ事も出来ない。
それを分かってノイは、そのまま小銭拾いを続行する。
「おじちゃん、怪我は?」
「これくらいどうって事も無い。」
確かに出血はしているものの、普通に動けているので問題は無いのだろう、けれど子どもたちは罪悪感に駆けられていた。
「…ごめんなさい。」
「さっきも言ったろ、俺が怒る必要もねぇし…お前らが謝る事もねぇ。」
そんな事よりも、とノイは話を切り替える。
「お前らこれからどうすんだ、ここに残るのか…それとも、警官に助けを求めんのか。」
その問い掛けに、子ども達はすぐに答える事が出来ず、口を噤んでしまう。
「………言っとくが、俺はもう何もしねぇぞ。」
何故だろう、と子ども達がノイを見つめると「当たり前だろ。」と返される。
「警官にも、ここで寝ている奴らにも、俺は睨まれてる…どっちかに捕まる訳にもいかんし、この島には旅の途中で寄っただけだしな。」
「でも、でも…じゃあ………僕達、どうすれば………!」
やっと現れた頼りになる大人、その手を求めたくてつい感情的になってしまう。
「お母さんも…お父さんもいない…ずっと警官なんて何もしてくれない、寧ろ危険だから寄るなって言われて避けてきたのに…何も出来ない僕らはどうすればいいの!!」
兄が泣き出し釣られてしまったのか、または自分も不安に思ったのか、弟も同じ様に泣き出す。
「何言ってんだ、出来る事あんじゃねーか。」
酷く呆れた様子で言い放つ彼に、嗚咽も出しながらも子どもは声を聞く。
「周りの大人がビビるぐらいの外見の俺に声を掛けた…アレは結構すげー事なんだぞ。」
「ひっぐ…そ、そえだけ…?」
大きく頷くとノイは彼なりに子ども達へエールを贈る。

「知らねー他人に声を掛ける事が出来たんだ…そこら辺にいる警官に助けを求めるのなんか、俺に話しかけるよりも簡単だぞ。」

小さく微笑む彼は、その後ろに蠢いている影を知る由も無かった。
17/19ページ
スキ