第1章(後編)
そして、太陽と交代して月や星が周りを照らす時間となった。
配置としては子どもであるガーナは寝室で寝かせ、他の船員たちの場所は、メソドは宝の前、ノイとサナは甲板、船長は船内にいた。
「手合わせした感じだと、正直ガーナに見てもらった方が良かったんじゃねぇか?」
使い慣れた手袋をはめながらノイはサナに話しかけた。
「まあ、そうね。」
「あいつもぼやいているが、いつまでも子ども扱いしない方が・・・。」
「それ、人のこと言えないわよ。」
苦笑交じりに話すサナを見て、ノイは眉間にしわを寄せた。
「あ?」
「お菓子買い過ぎるなって言うくせにいざお菓子がなくなると、内緒でお菓子作ってあげるのに。」
「いいじゃねぇか、そんぐらい。」
クスクスと笑ってから、でもとサナは話の内容をもとに戻した。
「確かに、あの怪盗は奇妙な術ができるみたいだったから、そういうことに一番詳しいのはガーナちゃんね。」
「まあな。」
「でも、どれだけ知識を持っていたとしても、体は子どもだから、労わってあげなきゃって船長も言っているし。」
「・・・そういやあの人の配置、間違っていねぇか?」
「あ、やっぱりそう思う?」
やっぱりといった様子で、サナはノイを見た。
「わたしもそう思う。」
「自分から言ったのか?」
「ええ、別にサボりたいからって訳じゃないみたいだったけど。」
「いや、寝てるだ」
そこまで言いかけて、ノイとサナは口を閉じた。
周りが霧で見えにくくなってきたのだ。
「・・・今日は雨とか降らなかったよな?」
「ええ、快晴といっていい程良い天気でした。」
一気にリラックスしていた雰囲気が緊迫したものへ移行する。
「・・・来るぞ。」
「はい。」
すぐさま、周りに変化が起きた。
濃い霧の中から、人影が浮き出てきた。
「こんばんは。」
「こんばんは。」
「・・・礼儀正しく挨拶返すんじゃねぇ。」
言葉こそ穏やかなものだが、そこの空間が一気に緊張に包まれる。
「予告はしたぞ?」
「えっと、“船の宝を奪う”・・・でしたっけ?」
「言っとくが、うちの船にそんな大層なものないぞ。」
未だに霧に包まれ、輪郭がはっきりしない相手との間合いをつめる。
「・・・宝というのは、何も金銭的に価値があるものだけではないだろう。」
低い声でゆっくりと相手は話す。
「確かにあの領主の家から盗んだものはそういったものが多かった、しかし、お前達の船には違う意味で価値のあるものが多いだろう?」
「・・・それは」
言葉の真意を問おうとサナが口を開いた時。
大きな音とともに船内への入り口が破壊された。
