第一関門を突破し、島に降り立ったノイが次に立ち向かわなければならない事は一つ。
情報収集の為、先に島に行ったサナと遭遇しない事。

大きな買い物袋を下げ、周囲を注視しながら歩く様は、正直島民達から見れば不審者そのものなのだが。
「なぁこれ。」
「ひ…へ、へぇ…。」
その強面が作用して、目立ちはするものの恐怖の方が勝つのか、まだ通報はされていない。
それなりに欲しかった物を手に入れる事ができ、重くなった買い物袋を満足げにノイは見つめる。
（財布は、空にはなってねー…無断で買い物しちまったし、そろそろ船に戻るか。）
くるり、と歩いてきた道を戻ろうと後ろを確認した。

そこには。
なんだか見覚えのある美形が、きゃいきゃいとはしゃぐ女子達に囲まれ談笑をしている光景が広がっている。

すぐさま近くの路地裏に駆け込んだ。
建物の影から覗けば、サナの美しさに吸い寄せられた女達がぐいぐいとお近づきになろうとしている様子に、彼がすぐにはこちらまで来る事が出来ない事を理解する。
（………バレてねぇ、よな。）
どちらにせよこれ以上は危険、そう判断し野路裏から回り道で船へ帰ろうとした所に。

小さな手が、ノイの服の裾を引いた。