第1章(後編)


日は暮れ始め、少しずつ船内が慌ただしくなり始めた。
「宝と言えるものはほとんどないけど、なくなったら大変なものはたくさんあるものねぇ~。」
「ぼさっとしてないで働け!」
「ねぇメソド、このお菓子どこに置いたほうがいいと思う?」
「それは・・・ノイに聞いたほうがいいんじゃないか?」
各自怪盗対策に自分が宝と呼べるものを隠していた。
そこに船長が帰ってきた。
「あっ、お帰りなさい。」
「おう、ガーナいい子にしていたか?」
「うん!」
「すると、横からノイが割って入ってきた。
「どこ行ってたんすか。」
「まあ、俺だけこの島に上陸してなかったし・・・。」
あ、あと・・・と船長は船員たちに告げた。

「その作業、正直意味がないから。」

「「「「・・・・・・ハァ!?」」」」
船員一同からツッコミを受けた船長は何事もないように、自室のベッドへ行こうとしたがノイとサナに阻まれる。
「ちょっと、俺眠い・・・。」
「さすがに今のは聞き捨てならねぇぞ!」
「意味がないってどういうこと!?」
船長の言葉の真意を探ろうと、二人が質問を投げる。
「え~今言わないとダメ?」
「寧ろ今言え!!」
「・・・・・・。」
不服そうに唇を尖らせたが、やがて諦めたようにため息をつくと、船長はすぐそばにあったソファーに座り、話し始めた。
「俺が出歩いていった時から、誰だか知らんが、ずっと後をつけられた。」
「・・・ずっと?」
「いや、詳しく言えば途中までだが、話しかけたし。」
「話しかけたのですか・・・?」
「ああ。」
何ともないように答える船長に船員たちは一斉に呆れ顔になった。
「・・・せめてさ、捕まえるとか。」
「だって、眠かったし。」
「この寝坊助!!」
「あ~やめろ、あんまり大声で叫ばれると眠れなくなる・・・。」
そこで立つと、のそのそと自分の部屋に戻っていった。
「・・・・・・相変わらず、やる気があるのかないのか分からない人ねぇ。」
「そうでもないよ。」
さらりと、メソドはこう言った。
「今寝るってことはちゃんと体を休めるってことだから。」
まあ、あの人の場合に限るけどねと微笑するメソドに他の船員も納得した。
「確かに。」
「うん!」
「そうね。」
船員の意見が全員一致したところで、部屋の扉が開き、船長がこんな一言を言った。

「そういえば、つけられたのは割と最初からだったから、今もこの船の中見てると思う。」

バタリと扉が閉まり、船員たちはすぐに首筋や顔に血管を浮かべながら窓のカーテンを閉めた。
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