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第7章


一気に周りの緊張感が高まる中、その変化が起きていた。
「な…何だ、これ!?」
ある警官が騒いでいて何事かと視線がティアラに集まる。

すると、信じられない事に。
ティアラが徐々に空気に融けるように透明になり始めていた。

「何故だ!?」
本来なら物体であるティアラが透明になるはずなど無く、警官達は目の前で起こっている異常事態に動揺するもいち早く上官の男が動き、ティアラを囲っているガラスケースを取りティアラの存在を確認するも、するりと煙が揺らぐ様に消えてしまう。
「…ッ近くに、犯人らしき者がいないか探せ!!」
展示台を大きく叩いてもティアラは出てこないと知りながら、彼は絶叫するかの様な言葉で周囲に指示を出す。
散ってゆく警官達を、館長はあまりにも早くそして異次元の襲撃に呆気に取られる事しか出来なかった。

「犯人を探せ!」と美術館のあちこちから犯人を探す為の松明の火が辺りを照らす。
その中で、一人同じく犯人を捜しているのであろう大柄な警官が走り回っていた。
「おい!」
後ろから同僚の警官に呼び止められ、彼は止まる。
「お前美術館内の警備組だったろ、松明は?」
「持っていない。」
くぐもった声で話され、それを聞いた警官は片眉を上げた。
「何だ、風邪でも引いてんのか?」
「ああ…あまり声が出ない。」
気を付けろよ!と去って行く警官を見送る彼は一つ呼吸をする。

「あぁ…気を付けるよ。」

そのまま彼は美術館の出口へと向かい「外を見てくる。」と言って捜索へ出て行った。

いまだ警備員達が周辺を右へ左へ走り回っている中、路地裏へとその警官は入る。
「…いいか。」
「はい、大丈夫かと。」
一人でいるはずなのに、声は二人分。
被っていたその帽子を取り、その背後にある影が濃くなってゆく。
「ふぅ…お疲れ様です、ノイさん。」
「お前もな。」
そこにいたのは、警官に扮したノイと黒い衣装に身を包んだマツリだった。
マツリの手元には、予告状通りにパールのティアラがある。

さて、彼等はどんな手段を用いて盗む事が出来たのか。

それはマツリが怪盗復帰宣言をした数日前の夕刻から始めた準備に答えがあった。
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