第1章(後編)


「ここは・・・いい景色だな。」

船長は、自分たちが船を置いている場所とは別の浜辺に来ていた。
雲一つない空の水色と海の藍色が船長の瞳に映った。
自分以外の人がいないことを確認した船長は、浜辺に生えている木の木陰を見つけそこでひと眠りすることを決めた。
少し歩いて火照っていた自分の体の熱が影によって冷まされていくのを感じながら、船長はゆっくりと、目を閉じた。

しばらくして、波辺の砂を踏む音で船長は目を覚ました。
誰かと思って、起き上がると・・・。

「・・・こんにちは。」

黒髪のガーナと同じ歳くらいのスケッチブックを持った女の子が話しかけてきた。
「こんにちは。」
愛想笑いというものが苦手な船長だが、できる限りの笑顔を作ってみる。
「・・・・・・。」
対応から見て逆効果だったようだ。
「すまん、笑うことは苦手で・・・。」
「・・・ううん。」
女の子は、顔を横に振るのを見て船長は少し安心した。
「この島はいいところだな。」
特に何も考えていなかったが、船長は女の子に話しかけた。
「うん。」
女の子はすぐに答えた。
「島の人、皆いい人だよ。」
「ああ、旅人の俺にも優しい。」
「・・・おじさんは、なんでこの島に来たの?」
内心まだ30歳と思っていた船長は少し傷ついたが、表情に出さずに話を続けた。
「食料補給かな。」
「お魚がおすすめだよ。」
「そうなのか。」
他愛もない会話を進め、時間になったのか女の子は帰っていった。
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