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第7章

綺麗な宝石の数々を堪能出来た事、加えて自分のお小遣いで出来る範囲で変えたお土産を購入出来た事に、まさしく幸せいっぱいというように笑顔で帰ってきたマツリは、上機嫌で先程の展示会で配られた展示品の目録を海賊船の食堂で見直していた。
「…おい、そろそろ飯だぞ。」
汚したくねーなら部屋に置いてこい、と忠告するノイに彼女はそこでやっと現実へ戻ってくる。
「あ…すみません。」
「帰ってからすっかり浸っているわね~。」
あれだけ綺麗な物を見た後だから仕方の無い事だけれど、と微笑ましく見るサナの隣、逆に不服だとばかりに頬を膨らませている人物がいた。
「…サナやマツリはともかく、何できれいな物のありがたみが分からないノイが行ったの~?」
「お前が行くよりはマシだからだよ。」
すぐさま言い放つノイに、むき~ッ!と席を離れ、彼の足に噛みつくガーナに「痛ぇな、料理の邪魔すんな!」と叱る。
「ご飯の準備出来た~?」
とメソドと共に食堂に入ってきたのは、船長だった。
「船長、今日はありがとうございました!」
「ん…その様子だと、だいぶ満喫出来たみたいだな。」
はい!と目を爛々と輝かせて、彼女は早口で喋る。
「今までは絵画を中心に見ていたのですが、ああいった作品もとても興味深かったですね!…作品そのものも美しいのですが、付けた人の事を考えて出来た構造という所も、自分では見つけられなかった着眼点があって…」
「おーい、誰一人お前の熱に追いつけていないぞー。」
額から掛かるミツメの声にも構わず、語ろうする少女にうんうんと満足そうに船長は頷く。
「そこまで隅々見られたなら本番も大丈夫そうだな。」
そこでぴたんとマツリの言葉が止まる。
「…本番って、何のですか?」
そういえば、と今更ながら彼女は思い出していた。
今日船長から美術館へのチケット代の金銭を出された際『美術館の隅々まで見てくれよ。』と言われた事を。
「今日の目玉展示…その目録の最後に書いてあるやつ。」
それは、マツリ達が最後に見たパールのティアラ。

「それ、盗ってきて。」
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