第1章(後編)


「ふわ~。」
同時刻、家から出てきたマツリは、伸びと同時にあくびをしていた。
「さて、今日も一日頑張らないとな。」
そして家に戻り、屋根に登る。
そこが一番海賊たちを見張るのに適した場所だった。
「いい加減出て行ってくれないかな・・・。」
決して船との距離は近くない、しかしマツリには視えているようだ。
頬に両手を当て、いかにもつまらなさそうに様子を伺っていたマツリだが、ある変化を見つける。
「何か、いつも眠っている人が出てきた・・・。」

「・・・ふーん。」
船から降りてきて船長は島の様子を見ていた。
商店街のところへ辿り着いたが、声を掛けてくる人が少なかった。
(・・・メソド達が来たときは目的が分かっているように多くの人が声を掛けてきたみたいだが。)
島民達を見て、自分が少し恐れられている事を感じることは出来た。
(ま、クマが酷いから人相が悪いってのもあるんだろうけどな。)
商店街を抜けて、適当にぶらぶらと特に目的もなく船長は島を散歩していた。

畑が一面に広がる場所に出てきて、船長はずっと後ろから付いてくる気配に声を掛けてみた。
「なぁ、そこにいるんだろ?」
後ろを振り向いた先には、人が隠れるにはちょうどいい果物のなる木があった。
風によって青葉が揺れる音に混ざって、小さな音ではあったが、髪が揺れる音を船長は聞いた。
「得体も知れない旅人かもしれないが、話し相手になってくれないか?」
数分時が過ぎたが、特に何も反応はなかった。
しょうがなく、船長はまだ回っていないところに行こうとして歩き始めた。

「・・・・・・。」
足音が遠くに行ったのを聞き、木からひょっこりマツリは顔を出した。
(どんな奴が後をつけているかまでは分からなかったみたいだけど・・・。)
心の中でこのまま目的が分かるまで追うかあきらめて家に帰った方がいいか迷っていた。
(話しかけられた様子だと、無表情だったけど話し合う気はあるみたいだったな。)
マツリは静かにうなずくと、行動を起こしにある場所へ向かって走った。
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