第6章
「さっすが弱った所を突く連中はひと味違うねぇ~…もう終わっちまったぜおい。」
死屍累々に近い状態となり甲板まで運ばれ、そこに積み重ねた彼等の上に立っている船長が呟く。
恐らく長年霧の恩恵を受けて反撃される事を考えていなかったのだろう、大人に戻った海賊達からの反撃に耐えられる者は誰一人いなかった。
「小舟に控えていた奴らも居たみたいですが…見捨てた様子ですね。」
「すぐに宝盗んでトンズラ出来ると思ってたんだろ、時間があまりに長かったからな。」
貰えるモンだけ貰って後は捨てるか~と戦いの後とは思えない程緊張感の無い声を出していると、後ろから複数の足音がする。
「これで全員みたいだぞ。」
「………。」
船長の部屋以外で植物に捕まっていた男達を回収し終えたノイとサナが現れた。
「ご苦労さん。」
「…わたし先に部屋に戻っていいですか?」
低い声音で不機嫌なのを隠さない美形の訴えに、船長は「…ッ、いいぞ。」と堪えきれない笑みと共に許可を出す。
彼の様子に静かに睨み付けていたが、そのままサナは船内へと戻っていくと、入れ違いでガーナが現れる。
「よ~本日一番の功労者。」
「…おわったんだね。」
船長達の無事を確認して、そのまま両膝を床に付いてしまうガーナ。
「も~…こもりはこりごりだよ…。」
ずっと身の内で溜まっていた疲れが言葉と共に出る様子に、どこからか労いの言葉が掛けられる。
「お疲れ様、ガーナちゃん。」
「んえ、マツリ?」
声はするものの、その姿が見えず少女はくるくる首を回すもマツリはいない。
「あ…ごめんね、今姿透明にしているから。」
「でも、おそってきた人たち全員やっつけたんだから、もう出てきていいとおもうけど。」
至極真っ当な言葉である、けれど彼女は「う~ん…。」と歯切れの悪い言葉を出すばかりで一向に姿を見せなかった。
答えられない彼女に変わり、ノイはその口を開く。
「見せられねぇんだよ、裸だから。」
その場に沈黙が訪れる。
ガーナは目を点にしてメソドに視線を送ると相手は苦々しい表情で、説明を加えた。
「あの緊急事態ですぐさま服を着て出る時間が無くて…全員裸のままで戦っていたんだ。」
「え、でも…服着てる、よね?」
目の前で見るマツリ以外のメンバーはいつもと変わらない服を着ている様に見えるのだが。
「そこはオレの力でカバーしてんのよん。」
姿無き声、ガーナはすぐにあの目玉の声だと確信する。
「思春期真っ只中な娘にマッパで戦わせる訳にも、野郎共が熱苦しい裸見せて戦う絵面も見せる訳にいかなかった訳ですよ、『ミツメ』は健全な小説だからねっ!」
「何かおかしな理由が混ざっているけど…そういうこと。」
ちなみに、サナが先程不機嫌に戻っていったのは、幻覚で隠していても裸でいる事に耐えられなかったからである。
いや~服着てんのにすーすーするの不思議すぎる感覚だなぁ~と船長は笑っているのだが、その正面にいる少女は、プルプルとその身を震わせていた。
そして、本日最後の特大雷が落とされる。
「全員、いますぐ服をきろ~~~~~!!!!!」