狭い檻の中に、獣が居た。

「いいね、コイツ買っていい？」

最初に向けられた言葉はそれだった。
そこから、檻は外され船に移り、部屋の隅に獣は逃げると、目の前に一つの食べ物が出される。

「人の腕に噛みつくより、こっちの方が美味いぞ。」

餌付けをされた獣が油断している内に、体の怪我を診られた。

「…動くな。」

いつの間にか麻酔を打たれ、眠った後お風呂で目を覚まし泡だらけの体のまま逃げ出す。

「ちょ、汚れているのだから大人しくしていなさい！！」

4人の大人達に囲まれた獣は、時に噛みつき、時に甘えながら年月を重ね徐々に。
“ガーナ”へと、成長していった。

そのガーナにとって、ここにいる船と海賊達は、唯一無二の家であり家族であった。
だからこそ、彼女は逃げるという選択肢を持たない。

ガブリッ！！

「いってえ！？」
ガーナは体全体を激しく揺らし、その反動を生かして賊の手首に思いっきり噛みつき、怯んだ頭は手の握力を弱め、ガーナの首から手を離す。
「…クソが！」
もう一度ガーナに手を伸ばそうとするも、後ろに控えていた植物達がガーナの体を囲い守った。

「お金なんてしらない、アンタたちになんて付いていかない！…だって、ガーナの帰るばしょはここだけなんだから！！」