第6章
先程とは打って変わり、こちらを警戒する様子を見せる彼等にガーナは手応えを感じていた。
(いける…うん、大丈夫!)
少し前、マツリを抱えて眠っていたガーナはまず植物達の声によって起こされる。
(てき…?どうしよう、今船をあやつっている子達におねがいしてもにげきれるかな…。)
実はガーナが船を遭難させない為に取った方法…それは緊急用の舵、船底に敢えて残し、ガーナの血によって進化させた海の植物…藻達を使い、なるべく同じ場所に留まるように船を泳がせていた。
ある程度藻達によって船の位置を変える事は可能ではあるが、波の様子により操縦が不可能な状態になる事もあり、今波が穏やかなこの場所を離れるのは良くないとガーナは考えていたのだが。
(…どうしよう。)
決断を迫られるガーナ、その腕の中から微かな震えが伝わってきた。
「マツリ?」
自分と同じく眠っていたと思っていた彼女は起きていて、その身を縮こめている。
まるで。
怖くて堪らないと、今にも叫んでしまいそうな声を全身で押さえ込むように。
(…マツリも、知っているんだ。)
ひょっとしたら、自分と寝たいとおねだりした時でさえ、もう知っていたのかもしれない。
目の前で揺れるその髪を撫でて、小さな姉は一つ息を吐く。
「…ガーナ、少しおそとに行ってくるね。」
ガバリッとこれまで小さく動いていた彼女は、ここで初めて素早く動きガーナを見上げ首を振る。
「平気だよ、ちょっとしんこきゅうしてくるだけだから。」
いかないで、と言うようにガーナの服を握りしめていたマツリだが、変わらないガーナの表情にその手の力が弱まってきた。
「ひとりじゃないから。」
そして、ガーナは心苦しいのと少しの悔しさを胸に抱えながら彼を起こす。
「ノイ…ごめん、起きて。」
目を瞬かせながら、彼は素直にガーナに応じてくれた。
「ん…。」
「聞いて。」
ガーナは真っ直ぐにノイを見つめ、今の状況を説明する。
始めこそぽやぽやとした寝起き顔をしていた彼だったが、次第に真剣な顔になってきた。
「俺達は…どうすればいい?」
船の上だから逃げ場は無い、それを承知の上で彼はガーナに問う。
「今からこの部屋に皆隠れていて欲しい。」
そう告げると、ガーナは部屋に置いていた植物達を子ども達の寝床付近に置く。
「この子達に守ってもらうから…だから、ここよりそとに出ちゃダメだよ。」
「待てよ、アンタは…」
ノイの言葉が言い終わらない内にガーナはポケットからナイフを出し二の腕を軽く切った。
傷口から伝う血を指で拾い、4つの植物達へ塗り込む。
ざ、ざざッざざざッ!!
みるみる植物達が成長し、子ども達をベッドやソファーごとまるっとドーム状に包み込んだ。
心臓の音がやたら煩く、植物達の内側から聞こえる声達もガーナの耳に届かない。
「ガーナが、貴方たちを守るからね。」
決断は下され、少女は迷い無くその部屋から出る為の一歩を踏み出した。
(いける…うん、大丈夫!)
少し前、マツリを抱えて眠っていたガーナはまず植物達の声によって起こされる。
(てき…?どうしよう、今船をあやつっている子達におねがいしてもにげきれるかな…。)
実はガーナが船を遭難させない為に取った方法…それは緊急用の舵、船底に敢えて残し、ガーナの血によって進化させた海の植物…藻達を使い、なるべく同じ場所に留まるように船を泳がせていた。
ある程度藻達によって船の位置を変える事は可能ではあるが、波の様子により操縦が不可能な状態になる事もあり、今波が穏やかなこの場所を離れるのは良くないとガーナは考えていたのだが。
(…どうしよう。)
決断を迫られるガーナ、その腕の中から微かな震えが伝わってきた。
「マツリ?」
自分と同じく眠っていたと思っていた彼女は起きていて、その身を縮こめている。
まるで。
怖くて堪らないと、今にも叫んでしまいそうな声を全身で押さえ込むように。
(…マツリも、知っているんだ。)
ひょっとしたら、自分と寝たいとおねだりした時でさえ、もう知っていたのかもしれない。
目の前で揺れるその髪を撫でて、小さな姉は一つ息を吐く。
「…ガーナ、少しおそとに行ってくるね。」
ガバリッとこれまで小さく動いていた彼女は、ここで初めて素早く動きガーナを見上げ首を振る。
「平気だよ、ちょっとしんこきゅうしてくるだけだから。」
いかないで、と言うようにガーナの服を握りしめていたマツリだが、変わらないガーナの表情にその手の力が弱まってきた。
「ひとりじゃないから。」
そして、ガーナは心苦しいのと少しの悔しさを胸に抱えながら彼を起こす。
「ノイ…ごめん、起きて。」
目を瞬かせながら、彼は素直にガーナに応じてくれた。
「ん…。」
「聞いて。」
ガーナは真っ直ぐにノイを見つめ、今の状況を説明する。
始めこそぽやぽやとした寝起き顔をしていた彼だったが、次第に真剣な顔になってきた。
「俺達は…どうすればいい?」
船の上だから逃げ場は無い、それを承知の上で彼はガーナに問う。
「今からこの部屋に皆隠れていて欲しい。」
そう告げると、ガーナは部屋に置いていた植物達を子ども達の寝床付近に置く。
「この子達に守ってもらうから…だから、ここよりそとに出ちゃダメだよ。」
「待てよ、アンタは…」
ノイの言葉が言い終わらない内にガーナはポケットからナイフを出し二の腕を軽く切った。
傷口から伝う血を指で拾い、4つの植物達へ塗り込む。
ざ、ざざッざざざッ!!
みるみる植物達が成長し、子ども達をベッドやソファーごとまるっとドーム状に包み込んだ。
心臓の音がやたら煩く、植物達の内側から聞こえる声達もガーナの耳に届かない。
「ガーナが、貴方たちを守るからね。」
決断は下され、少女は迷い無くその部屋から出る為の一歩を踏み出した。