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第6章

何でこうなるのかな、と今日何度も思った言葉を頭に浮かべながら、ガーナは二人分のベッドにぎゅっと集まった5人の子ども達を見る。
元々は各自の部屋に入れようと思ったのだが、メソドの医務室や船長の部屋は下手に中を探られると彼等が怪我をする恐れがあり、なので男子達をノイとサナの部屋へ入れようとしたら。
「こわくてねむれない…。」
「トイレわかんね~。」
「さむい。」
等々クレームが出たので、仕方なく全員ガーナとマツリの寝室に来てもらうこととなった。
ベッドで寝る者もいれば、ソファーや床に布団を敷き寝る選択をする子どももいて、ガーナは「もうかってにして…。」とベッドに誘導する気も無くぐったりとしている。
「…でも、今日はねるわけにはいかないなぁ。」
航海には色々な障害が付きものであり、その一つが夜…船の上の生活、一日中舵を持っていないと理想郷へ辿り着けないどころか栄養補給、金銭の確保に重要な道中の島へ行く事も不可能であり、海賊達はいつも交代制で船の舵を握っていた。
しかし、それが今出来るのはガーナしかいない。
(今はあのほうほうでどうにかしているけど、ガーナがねちゃったらいざという時なにもできないし…。)
よふかしはびようのてきなのになぁとサナからの受け売りの言葉を思い起こしながら、ガーナは寝室から出て行こうとする。
くんっと小さな力を感じ、彼女はベッドを見るとマツリが服の裾を握っていた。
「…眠れない?」
こちらを窺う様に見つめるマツリにガーナが問うと少女は首を振る。
「………おねぇちゃん、どこかいくの?」
どうやら自分が離れてしまう事に不安を感じているらしい、しかしガーナは別の感情で胸が一杯になっていた。
(おねぇちゃん…おねぇちゃん、かぁ…!)
思わずにやけそうになる口の端をどうにか動かさないように注意しながら、ガーナは話しかける。
「船の上にいこうとおもって…なにがおきるのか、分からないから。」
「……………。」
ぎゅう…と裾を握る力が強くなった。
言葉では発さないものの、どうやら不満があるらしい。
ある程度の信頼を彼女から貰う事の出来たガーナは、そのまま優しい口調で話す。
「いっしょに上にいく?…今日ははれているから、おほしさまもきれいだよ。」
ふるふると首を振られ、もしかしたら言いにくい事なのだろうかとガーナはマツリの顔を覗き込む。
「……………いっしょに、ねてほしい。」
その目をぎゅっと瞑って告げるのは、わがままを言って嫌な顔をさせてしまうのを見たくないからだろうか。
いまだに服の裾を握ったままの彼女は、ガーナに必死に訴えている。
「いいよ。」
「…え。」
ベッドから離れようとしていた彼女は、マツリの居るベッドの中へ戻った。
「いっしょにねよ、マツリ。」
共に毛布に入り、ぬくもりがお互いの体を包み込む。
ねむれそう?とガーナに尋ねられたマツリは、そのまま彼女の腕の中まで近寄りこくりと頷く。
(…今日は、いいよね。)
しなければいけないことは山程ある、しかし目の前の少女のわがままを聞く事、それが今何よりもガーナが優先したい事だった。
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