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第6章

そこは船の中でも隅にある物置部屋だった。
武器や船長が集めた骨董品、嵩張った物が多く入れられた倉庫、そこに彼女はひっそりと身を隠している。
頭上や足下に気を付けながら、ガーナは部屋の中を進むと「こないで…。」と声がした。
「なんで?」
「………………こわい。」
そういえば、彼女はもうすでにその額に三ツ目を持っていた、とガーナは思い出す。
成長した彼女は自分の力の事を「綺麗だ。」と言ってはくれたが、今の彼女は幼くなり自分を見た感想が同じとは限らない。
今更ながら、最初彼女に抱いていた感情を思い出し、ガーナの足も止まりそうになる。

それでも。

「何がこわいの?」
来ないでと言われたなら、足を止めて聞けばいい。
マツリが自分に歩み寄ってくれたように、ガーナも彼女に尋ねてみた。
「おしえて、マツリは何がこわいの?」
びくりと座り込んだままその身を揺らす彼女を暗い中しっかりと見つめる中、ガーナが答えない限り自分の元を離れないと分かったのか唇を震わせながら告げられる。

「…あたしに、あたりそうでこわかった。」

小さな声で答えが返ってきた。
「いしとかすなとか…むしとかなげられなかったけど………なげられるのは、こわい。」
ガーナは大きくなったマツリの言葉を思い出す。
『昔はこのバンダナも無くて島の皆からバケモノ扱いされてた…同い年の子たちは…怖かったみたいで、仲良くはなれなかった。』
つまり、今の彼女はその過去を生きているマツリなのだ。
自分と同じ子どもだらけの空間に、何も言わず静かに表面上過ごしているかに見えたが、内心は怯えてしまい、こうして逃げるチャンスをずっと窺っていたのかもしれない。
憶測でしか無いが、堪らなくなってガーナは自分の感情の赴くまま彼女の元へ進む。
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