第5章
海賊船、船の甲板後方。
葉巻を口にし、床には灰皿、両手にはマッチを手にしている大男が居た。
一つ呼吸を置いて、マッチを擦る。
ぱちっ
「ッ!」
思わず両の手を離し、両腕がピンと伸びた状態へとなる。
ゆっくりと目を開けて、点火しているはずのマッチ棒を見るも、期待虚しく既に消えていた。
「だから、いつも呼んで良いって言っているじゃない。」
後ろから声を掛けられ、その広い背中がびくりと動く。
声を掛けたのは勿論、あの美形の男だった。
「…手、見せなさい。」
近付いてきて手を見ようとするもそれを隠されたので、低い声で告げる。
「見せないと今月お小遣い無し。」
「無しはねぇだろ!」
それでも見せたくないと背中に隠すので、視線で訴えると相手が折れた。
「…全く、殴ってしまったなとは思ったけれど。」
普段ノイが蹴り技で相手を倒すのは、料理を作る際支障をきたしてしまう為に足中心の戦いを選んでいる。
元々はケンカの際殴り中心のスタイルだったようだが、料理を作り始めて変えたらしい…しかし。
「怒ってくれたのですね。」
ノイが持ってきた他のマッチを擦り、火を渡す。
それを少し躊躇したものの、すぐに火を当てて葉巻を口に含む。
「…向こうのやり方が気に食わなかっただけだ。」
俺も未熟だしな、と包帯で巻かれた片手を見ながらふーっと煙を吐く。
サナは少女から教えて貰った。
この目の前に居る人物は、船長の指示を無視してまで、自分を取り戻す為に行動し、感情的に使用人達を殴ってしまったという事を。
ノイは怒りに支配されると、こうして足ではなく手が出てしまい、そして決まって手が治るまで料理に手を付けなくなる。
(料理から血の味がする、なんて…誰も言わないのに。)
そう思っているのは本人だけなのだが、ずっと譲れないもののようだった。
「灰皿、要る?」
「…おう。」
何も言わないけれど、行動で示す。
火が苦手なのに克服の為に吸っている葉巻を灰皿に擦りつけている彼を、サナは微笑んで見つめていた。
葉巻を口にし、床には灰皿、両手にはマッチを手にしている大男が居た。
一つ呼吸を置いて、マッチを擦る。
ぱちっ
「ッ!」
思わず両の手を離し、両腕がピンと伸びた状態へとなる。
ゆっくりと目を開けて、点火しているはずのマッチ棒を見るも、期待虚しく既に消えていた。
「だから、いつも呼んで良いって言っているじゃない。」
後ろから声を掛けられ、その広い背中がびくりと動く。
声を掛けたのは勿論、あの美形の男だった。
「…手、見せなさい。」
近付いてきて手を見ようとするもそれを隠されたので、低い声で告げる。
「見せないと今月お小遣い無し。」
「無しはねぇだろ!」
それでも見せたくないと背中に隠すので、視線で訴えると相手が折れた。
「…全く、殴ってしまったなとは思ったけれど。」
普段ノイが蹴り技で相手を倒すのは、料理を作る際支障をきたしてしまう為に足中心の戦いを選んでいる。
元々はケンカの際殴り中心のスタイルだったようだが、料理を作り始めて変えたらしい…しかし。
「怒ってくれたのですね。」
ノイが持ってきた他のマッチを擦り、火を渡す。
それを少し躊躇したものの、すぐに火を当てて葉巻を口に含む。
「…向こうのやり方が気に食わなかっただけだ。」
俺も未熟だしな、と包帯で巻かれた片手を見ながらふーっと煙を吐く。
サナは少女から教えて貰った。
この目の前に居る人物は、船長の指示を無視してまで、自分を取り戻す為に行動し、感情的に使用人達を殴ってしまったという事を。
ノイは怒りに支配されると、こうして足ではなく手が出てしまい、そして決まって手が治るまで料理に手を付けなくなる。
(料理から血の味がする、なんて…誰も言わないのに。)
そう思っているのは本人だけなのだが、ずっと譲れないもののようだった。
「灰皿、要る?」
「…おう。」
何も言わないけれど、行動で示す。
火が苦手なのに克服の為に吸っている葉巻を灰皿に擦りつけている彼を、サナは微笑んで見つめていた。
