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第5章

ガサリ、と新聞の開かれる音がする。
「…ま、予定通りいって良かったな。」
海賊船の船長室、書斎の席に座り彼が相手へと話しかける。
見てみろよ、と新聞紙を机に広げ彼にも分かるよう見せた。
その一面は。

『老い故の乱心!?アスタニア家当主の末路』

大きな文字と、小さく詳細を書かれた記事、そして警察に取り押さえられ暴れるサナの父の姿がそこにイラストで描かれていた。
「…ご迷惑をお掛けしました。」
頭に包帯を巻いた状態サナが、彼に対して頭を下げる。
「ん〜まぁ、あんまり気負うなよ。」
オレ達がしたいようにやった結果なんだし、と相変わらずそのにやけ顔は崩さずに彼は告げる。

あの夕方、海賊達はサナが捕まった事に気付くとすぐに作戦会議をした。
サナを助ける為、まず現状を分析する。
「まず関所があるから、助け出してそのまま島から逃げる事が出来ないな。」
「そうなんですか?」
サナの追跡から帰ってきたメソドの一言にマツリが首を傾げる。
「出島手続きが面倒なんだよ…あと関所の営業時間っていうのがここは存在しているからな、そもそも辺りが真っ暗の深夜に出航する船は出ようとした時点で怪しまれるし、安全の観点からしても止められてしまうだろう。」
「なるほど…。」
「つまり、オレ達はサナを翌日までには救い出さないと、この島を無事には出れない。」
しん…とその場が静かになる。
そこから、彼をどう救出するか詰めていった。
力技なら船長とノイがいればまずどうにかなる、しかしそこからずっと逃げ切るとなると、体力はなくなるし、船に逃げるのは得策では無い。
そこで手を挙げたのは。
「ーあの、夜までに幻灯石いっぱい用意する事って出来ますか?」

光がある場所でしか幻影を使えないマツリは、ガーナの植物を強化する力も借りて屋根まで登り、所々でその力を使っていた。

例えば、ノイと船長がサナを救出し、メソドと合流するまで先に倒した門番がいる様に見せたり。
例えば、逃亡したサナ達の行方を暗ます為に、道行く人全てをサナに見せたり。

「流石に限定的に力を使ったから、疲れたらしいけどね。」
船長のその言葉通り、アスタニア家当主とその使用人達だけに幻覚を見せるのは集中力が必要だった様で、彼らが警察に捕まったのを確認した直後倒れてしまったらしい。
「限界まで能力を使った事が無いからその反動だろうって…ま、もう起きたらしいから、顔見てこいよ。」
オレの方はもう良いからさ、と船長に促され、サナはマツリが寝ている医務室まで行く事となった。
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