第5章
手足が自由になった所で、部屋の扉に耳を当て周囲に人が居ないかどうか確認する。
人の呼吸、足音が耳に入らない事を知ると、靴のヒールをバギリと折り、その中に隠されていた針金を取り出す。
(鍵穴は…老朽化が激しいから解除は難しくない、焦らず…丁寧に。)
元より日頃編み物や船の修理をしている彼は、手先が器用の為こういった作業は得意であるという自負があった。
サナが解析した通り、鍵穴は恐らく久し振りに使ったのであろう、埃が被っており、錆びもだいぶ浸食している。
(ノイちゃんや船長辺りなら力技でぶっ壊しちゃいそうね…出来るでしょうけれど。)
ただし、今彼が実行しようとしているのは“脱出”だ。
なるべく穏便に暴力に出る事無く静かに去る、そして海賊達の元へと宣言通り帰る事。
そして、今。
カチャリとその音が鳴り響いた。