第5章
海賊の船大工である彼、サナの武器はナイフだ。
これまでの話の中でもそれが用いられる場面があったが、その使い方にも彼自身の工夫がある。
一本、または二本のナイフで直接戦う事もあれば、ナイフ自体を投げて敵の動きを牽制する使い方、また敢えてなまくらな物を使い脅す事もあった。
それを可能にするのは。
(コートの内ポケットは見ていても、生地の中までは確認しなかったわね。)
彼の服の内側にあった。
サナの服には、元より多くの武器が仕込めるよう彼自身が作っていて、それはコート、チューブトップ、パンツ、靴に至るまで施されている。
それでも、父親から発見された武器は取られてしまったが、体を縛る縄をナイフで切って動けるようになったサナは自分の手元に残った物で脱出の手順を考えた。
(リンリン草は…枯れかかっているようだけれどまだ使えそうね。)
外に人が居ないとは限らないから今すぐは使えない、しかしながらこの便利な通信出来る植物の使用期限は夜中まで。
日を跨いでしまった途端に、ただの枯れた植物になってしまうので注意が必要だ。
つまり、彼には。
(時間が無い、か。)
元より承知だ、と彼は思う。
今海賊に加入し冒険にその身を投じている彼ではあるが、一番その身に年齢の壁がいち早く押し寄せられているのを日々感じてはいた。
自分の体が完全に老いてしまう前に、理想郷への道を切り開きたいと。
自分が自分としてゆるされる場所に辿り着きたい。
その一心でこれまで駆け抜けてきた。
(だから、こんなところで…過去になんて足止めされるわけにはいかないですよね。)
サナは、一人で自分の家であったこの場所からの脱出を決心する。
これまでの話の中でもそれが用いられる場面があったが、その使い方にも彼自身の工夫がある。
一本、または二本のナイフで直接戦う事もあれば、ナイフ自体を投げて敵の動きを牽制する使い方、また敢えてなまくらな物を使い脅す事もあった。
それを可能にするのは。
(コートの内ポケットは見ていても、生地の中までは確認しなかったわね。)
彼の服の内側にあった。
サナの服には、元より多くの武器が仕込めるよう彼自身が作っていて、それはコート、チューブトップ、パンツ、靴に至るまで施されている。
それでも、父親から発見された武器は取られてしまったが、体を縛る縄をナイフで切って動けるようになったサナは自分の手元に残った物で脱出の手順を考えた。
(リンリン草は…枯れかかっているようだけれどまだ使えそうね。)
外に人が居ないとは限らないから今すぐは使えない、しかしながらこの便利な通信出来る植物の使用期限は夜中まで。
日を跨いでしまった途端に、ただの枯れた植物になってしまうので注意が必要だ。
つまり、彼には。
(時間が無い、か。)
元より承知だ、と彼は思う。
今海賊に加入し冒険にその身を投じている彼ではあるが、一番その身に年齢の壁がいち早く押し寄せられているのを日々感じてはいた。
自分の体が完全に老いてしまう前に、理想郷への道を切り開きたいと。
自分が自分としてゆるされる場所に辿り着きたい。
その一心でこれまで駆け抜けてきた。
(だから、こんなところで…過去になんて足止めされるわけにはいかないですよね。)
サナは、一人で自分の家であったこの場所からの脱出を決心する。