第5章
昔の様に少しそこで頭を冷やせ、と。
ガチャリと部屋の鍵が閉まる重い音がそこに響く音が、椅子ごと縄で雁字搦めに巻かれたサナの元に届く。
結果的に、彼はこの家に拘束されてしまった。
出入り口に人はいないが、縛った跡が残るのではないかと思う程、きつく縛られた体は大きく動く事は難しく、今居る場所は微かな光しか入らない地下の部屋。
どれ程時間が経過したのかは体感でしか分からないが、恐らく彼が屋敷に戻ったであろうと思われる頃を見計らって彼は動き始める。
(…懐かしいわね、こうして相手の都合で縛られるのは。)
サナはこうして部屋に閉じ込められるのは初めてでは無かった。
最初は誘拐された時、その次は姉達にクローゼットに閉じ込められた時、そして…娼館で働いていた時。
その美貌、容姿から、多種多様な客から手指を伸ばされたサナは夜煌々と光る火が多くの虫を集めるように求められ、時にそれは常軌を逸するような要求へと変わり、サナの意思とは関係なく自分の手元に置きたいと考えた客も存在し、その度にサナは対応を強いられた。
その中で、監禁する客も出てきたので、サナは逃げる術を致し方なく身につける事となった彼は今それを実行しようと行動に出る。
縛られた両手をゆっくりと動かし、身につけていたコートの裾を手に近づけ手繰り寄せると、片手で裾を固く握り、もう片方の手で勢いよく裾同士を擦り合わせると。
ビリッ!
何かが裂けた音がした。
(どれも嫌な経験だったけれど…感謝しないとね。)
それは、サナのコートの内に仕込んで合った小さなナイフだった。
ガチャリと部屋の鍵が閉まる重い音がそこに響く音が、椅子ごと縄で雁字搦めに巻かれたサナの元に届く。
結果的に、彼はこの家に拘束されてしまった。
出入り口に人はいないが、縛った跡が残るのではないかと思う程、きつく縛られた体は大きく動く事は難しく、今居る場所は微かな光しか入らない地下の部屋。
どれ程時間が経過したのかは体感でしか分からないが、恐らく彼が屋敷に戻ったであろうと思われる頃を見計らって彼は動き始める。
(…懐かしいわね、こうして相手の都合で縛られるのは。)
サナはこうして部屋に閉じ込められるのは初めてでは無かった。
最初は誘拐された時、その次は姉達にクローゼットに閉じ込められた時、そして…娼館で働いていた時。
その美貌、容姿から、多種多様な客から手指を伸ばされたサナは夜煌々と光る火が多くの虫を集めるように求められ、時にそれは常軌を逸するような要求へと変わり、サナの意思とは関係なく自分の手元に置きたいと考えた客も存在し、その度にサナは対応を強いられた。
その中で、監禁する客も出てきたので、サナは逃げる術を致し方なく身につける事となった彼は今それを実行しようと行動に出る。
縛られた両手をゆっくりと動かし、身につけていたコートの裾を手に近づけ手繰り寄せると、片手で裾を固く握り、もう片方の手で勢いよく裾同士を擦り合わせると。
ビリッ!
何かが裂けた音がした。
(どれも嫌な経験だったけれど…感謝しないとね。)
それは、サナのコートの内に仕込んで合った小さなナイフだった。