第5章
ずきずきと、痛みが己を現実へと呼び戻す。
薄く目を開くと、触覚以外の感覚が勝手にじわりと認知し始める。
(…暗い……そして、埃臭い。)
灯りが自分の居る部屋に無かったが、サナはここがどこなのか、徐々に把握出来た。
「躾け部屋…か。」
幼い頃、両親の言う事を聞けない時の兄弟や自分が、躾けの為だけに設けられた言わば反省部屋。
親や使用人に対して反抗的な態度が顕著な子どもは、この部屋に閉じ込められ自問自答、何が悪かったのかを頭を冷やして考えさせ、成長を促す用途で使われた部屋だったのだが、今思えば拷問部屋と同じだなとサナは口を歪める。
しかし、口を動かした事で唇が切れている事に痛みで気付く。
「…碌な話し合いもせずに拘束か、随分と堕ちたものね。」
暗くて見えない、しかも手足は拘束され、椅子に縛り付けられている状態ではあったが、目の前の気配気付かない彼では無い。
「堕ちたのはそっちの方だろうが、この親不孝者。」
加齢を感じさせる枯れた声、その主は紛れもなく自分の父の物だった。