第5章
かつん、かつん…と石畳を二人の人間が歩いて行く。
見慣れない旅人に向けて、現地の人々は様々な感情を込めた視線を投げてくる。
好奇、警戒、興味、忌避…観光に特化した島では無いロワイ島は、中へ入る手続きも複雑な所もあり外部から人が来る事は少なく、奇異の目で海賊達は見られていた。
しかしながら、今彼等に対して最も向けられている感情は。
「…綺麗な人ね。」
どこかで誰かが小さく呟く。
それもその筈で視線の中心、道の真ん中を歩いているのは、控えめな色味のドレスと帽子で飾られた女人だった。
その横を、身なりが整った小さな召使いらしき少年が隣で歩いている。
特に騒ぐ訳でも無く、ただただ歩いているだけなのだが、その光景を目にするだけで絵になると言っても過言では無い程に、島民達は非日常のその姿に惹かれていた。
「…こんなものかしらね。」
一度船に戻りましょうか、と口元を扇で隠しながら彼女は告げる。
「はい。」
日頃と全く違うその姿を、事前に知っていたはずなのに驚愕の感情がまだ脳内に残っている男装しているマツリは少し低い声で返事をした。