第5章
「それを何処で知った?」
名前を口にした賊の一人にサナは躊躇無くその口にナイフを寄せ、問いに答える事は無く寧ろ相手から脅してでも情報を聞き出そうとする。
「…っその反応は、アタリか。」
「何処で聞いた?」
サナの言葉には返事をせず、しめたとばかりに賊は笑い要求を口にした。
「教えて欲しいんなら、俺らに有り金と食いモンを寄越せ…それが条件だ。」
「貴方の方が不利な状況である事は理解しているのですか?」
冷静な表情は変えないまま、更にナイフを首元に近付けいつでも手を掛ける事が出来る状態へと持っていくも、男は余裕の姿勢を崩さない。
「いいのかねぇ、欲しい情報を持っている奴を殺して…他の奴は誰も知らないかもしれねぇのに。」
「………。」
静かに訪れる静寂、それは緊迫しているが故の探り合いの時間だった。
しかし、他者の乱入によってその時は破壊される。
「はぁい、ウチの船員虐めている奴は誰かな~?」
緊張感の欠片も無い声がその場に響く、その声の主は勿論彼のものだった。
ずるずると倒した何人かの首根っこを掴み引きずり現れたのは、海賊達を率いる者。
「…船長。」
「分かってるって、メソド。」
後ろに付いてきた彼に告げると、船長はサナと賊の目の前に持ってきた賊の仲間達を転がす。
「これ、お前の仲間ってことらしいけど…ずっとグルだった訳じゃなくて寄せ集めなんだよな?」
「………。」
船長の言葉を聞いてはいるものの答えはしない男、それでも構わないと船長は口を開く。
「よし、誰かがこの美形のフルネーム当てるまで、一人ずつ息の根止めてみるか!」
まるで子どもが悪戯を思いつくような声のトーンで、その言葉は宙に放たれた。